子宮筋腫は突然できるものではなく
体の中で長い時間をかけて育っていく“結果”です。
中医学では
その背景にあるのが 瘀血(おけつ) と呼ばれる血の停滞。
しかし瘀血が生まれる理由は人によってまったく異なります。
ストレス、冷え、食生活、疲労、体質
その人の生活の物語が瘀血を作り出します。
だからこそ
問診によって「どのように瘀血が生まれたのか」をつかむことが
治療の第一歩になります。
瘀血(おけつ)から子宮筋腫ができるまで(中医学)
1. 子宮筋腫の始まりは「瘀血(おけつ)」から
中医学では
子宮筋腫は「瘀血(おけつ)」が長期間続いた結果としてできる病気と考えます。
瘀血とは、単に「血液の流れが悪い」という意味ではありません。
血液が十分に流れず
一か所に停滞して
本来の働きができなくなった状態を指します。
この瘀血は、主に次の4つの原因によって作られます。
① 気滞(きたい)〔肝鬱:かんうつ〕
〜ストレスによって「気」の流れが止まる〜
気滞とは、「気(生命活動を支えるエネルギー)」の流れが悪くなった状態です。
特にストレスや怒り、不安などの精神的な負担が続くと、
**肝鬱(かんうつ)**という状態になります。
肝には、
- 気の流れを全身へ巡らせる働き(疏泄:そせつ)
- 血を貯蔵し必要に応じて送り出す働き(蔵血:ぞうけつ)があります。
そのため肝の働きが低下すると
気だけでなく血液の流れも悪くなります。
その結果、
肝鬱 → 気滞 → 血流低下 → 子宮の瘀血
という流れが始まります。
② 寒凝(かんぎょう)
〜冷えによって血液が固まりやすくなる〜
冷たい飲食や薄着、寒い環境などで体が冷えると、
**寒邪(かんじゃ:体を冷やす外からの病因)**が体内へ入りやすくなります。
中医学では寒には
- 凝滞(ぎょうたい):物を固める性質
- 収引(しゅういん):縮ませる性質があると考えます。
そのため、
子宮周囲の血管が縮み、血液の流れが悪くなります。
すると、
冷え → 血流低下 → 瘀血が固定化しやすくなります。
③ 気虚(ききょ)・脾虚(ひきょ)
〜血液を動かす力が不足する〜
過労や食生活の乱れ、甘いもの・脂っこいものの食べ過ぎは、
**脾(ひ)**の働きを弱めます。
中医学でいう脾は、西洋医学の脾臓ではなく、
胃腸全体の消化・吸収・栄養運搬を担う働きを意味します。
脾には
- 運化(うんか):食べ物や水分を消化・吸収し全身へ運ぶ働き
- 統血(とうけつ):血液が血管の外へ漏れないように保つ働きがあります。
脾が弱ると、
気虚
気(エネルギー)が不足し、
血液を押し流す力(推動作用)が弱くなります。
その結果、
血液が流れにくくなり瘀血になります。
さらに、
脾虚による痰湿(たんしつ)
脾の運化機能が低下すると、
余分な水分や老廃物が体内にたまり、
痰湿(たんしつ)
(粘り気のある病的な水分や老廃物)が作られます。
この痰湿は瘀血と結び付きやすく、
痰瘀互結(たんおごけつ)という状態になります。
これは子宮筋腫を作る非常に重要な病理です。
④ 腎虚(じんきょ)
〜子宮を支える力が不足する〜
中医学でいう腎は、
腎臓だけではなく、
- 成長
- 老化
- 生殖
- ホルモン機能など生命力全体を支える臓です。
加齢や慢性的な疲労、出産や生殖活動などによって腎の力が低下すると、
腎虚(じんきょ)になります。
腎は精(せい:生命エネルギーの源)を蓄え、
女性では
衝脈(しょうみゃく)(全身の血液を調節する「血海」と呼ばれる経脈)と
任脈(にんみゃく)(子宮や妊娠を支える経脈)を十分に養っています。
しかし腎虚になると、
衝脈・任脈に十分な血液や栄養が送れなくなり、
子宮の血流が低下して瘀血が生じやすくなります。
2. 瘀血が子宮に長期間とどまるとどうなるのか
瘀血が改善されず長期間子宮に停滞すると、
子宮筋腫へと進行しやすくなります。
中医学では「不通則痛(ふつうそくつう)」
つまり
「流れが悪いところには痛みが起こる」と考えます。
さらに、
「不栄則病(ふえいそくびょう)」とは、
「十分な血液や栄養が届かない場所では病気が起こる」という意味です。
① 瘀血が長く続くと血液が塊になる
長期間停滞した瘀血は、
血凝成塊(けつぎょうせいかい)つまり
「血液が固まって塊になる」状態へ進みます。
この固定した腫瘤を癥瘕(ちょうか)と呼びます。
癥瘕とは、
体内にできる動きにくい硬い腫瘤の総称で、
子宮筋腫はその代表的な病態の一つと考えられています。
② 痰湿が加わると「痰瘀互結」になる
脾虚によって作られた痰湿は、
粘り気があるため瘀血と結び付きやすくなります。
これを
痰瘀互結(たんおごけつ)と呼びます。
痰湿は腫瘤を大きくし、
瘀血は血流をさらに悪化させます。
この二つが互いに悪循環を作ることで、
子宮筋腫は徐々に大きくなっていきます。
③ 衝任脈の流れがさらに悪くなる
筋腫が大きくなると、
- 血海である衝脈
- 子宮を支える任脈の流れがさらに妨げられます。
その結果、
子宮内の血液循環がますます悪くなり、
瘀血は固定され、
筋腫も成長しやすくなります。
3. 子宮筋腫ができる流れ(まとめ)
子宮筋腫は一つの原因だけでできる病気ではありません。
複数の病理が重なり合って、少しずつ形成されると考えられています。
① ストレス
→ 肝鬱(肝の気の巡りが悪くなる)
→ 気滞(気の停滞)
→ 瘀血(血流の停滞)
② 食生活の乱れ・過労
→ 脾虚(消化吸収機能の低下)
→ 痰湿(病的な水分・老廃物)
→ 痰瘀互結(痰湿と瘀血が結び付く)
③ 加齢・慢性疲労・生殖機能の低下
→ 腎虚(生命力・生殖機能の低下)
→ 衝任失調(衝脈・任脈の働きが低下)
→ 子宮の血流低下
これらが重なることで、
瘀血が固定化
→ 血凝成塊
→ 癥瘕(子宮筋腫)
という流れで、子宮筋腫が形成されると中医学では考えられています。
西洋医学では、
女性ホルモンの刺激や炎症によって
筋腫や内膜症が大きくなると考えられています。
中医学では、
その背景に
- 血流が悪い
- 冷え
- 気の巡りが悪い
- 炎症が長く続く ことで瘀血が作られると考えます。
西洋医学が病気そのものを見るのに対し、
中医学では
『なぜその環境になったのか』という体質まで整えていきます。
子宮筋腫という木を見るだけではなく
その木が育ってしまった土も一緒に改善していきましょう。
つまり
- 木=筋腫・内膜症(結果)
- 土=瘀血を作る体質(原因) です。
宮筋腫や子宮内膜症は、長い年月をかけてできた「結果」です。
そのため治療は二本柱になります。
① 瘀血を作った原因
冷え・気滞・気虚・血虚・痰湿などを改善し
新しい瘀血を作らないこと。
② 今ある筋腫のもとになっている瘀血を少しずつ取り除く(活血・破血)こと。
この二つを同時に行うことで
「今ある病気」と「再びできやすい体質」の両方に働きかけることが
中医学治療の大切な考え方です。
子宮筋腫は「結果」であり
瘀血を作った体質こそが「原因」です。
原因が人によって異なる以上
治療も一人ひとり違う形になります。
だからこそ
問診で瘀血の原因を正確につかむことが
体質改善と再発予防の鍵になります。
中医学の治療は
筋腫そのものだけでなく
筋腫を育てた体質まで整えていくことができます。
焦らず
少しずつ
体の流れを取り戻していきましょう。


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