子宮内膜症は突然起こるわけではなく
体の中で長い時間をかけて進行していく病気です。
中医学では
その背景に 瘀血(おけつ) があり
さらに血熱・寒凝・痰湿など複数の病理が重なって悪化すると考えます。
しかし
瘀血が生まれた理由は人によってまったく異なります。
ストレス、冷え、食生活、疲労、体質
その人の生活の積み重ねが瘀血を作り出します。
だからこそ
問診で「どのように瘀血が生まれたのか」をつかむことが治療の第一歩になります。
瘀血(おけつ)から子宮内膜症ができるまで(中医学)
1. 子宮内膜症は単に「瘀血(おけつ)」だけで起こる病気ではなく…
- 瘀血(血液の停滞)
- 血熱(けつねつ:血に熱がこもった状態)
- 寒凝(かんぎょう:冷えによる停滞)
- 痰湿(たんしつ:病的な水分や老廃物)
- 衝任失調(しょうにんしっちょう:女性の生殖機能を調節する経脈の異常)
が重なって発症すると考えられています。
2. 瘀血から子宮内膜症へ進む病理
① 瘀血が長く続くと「熱」を生じる
中医学には「久瘀化熱(きゅうおかねつ)」という考えがあります。
これは、
瘀血が長期間続くと、停滞した血が熱を帯びるようになるという意味です。
例えば、
ストレスによる気滞(気の流れの停滞)や
長期間改善しない瘀血が続くと、
血液は停滞するだけでなく「熱」を帯びた状態になります。
この状態を
血熱(けつねつ)と呼びます。
② 血熱によって血が正常な流れを失う
血熱になると、
血液は正常な経脈(血管)の流れを保てなくなります。
これを
血熱妄行(けつねつもうこう)といいます。
「妄行」とは、
本来の正常な流れを外れて異常な方向へ流れるという意味です。
中医学では、
この考え方から、
子宮内膜組織が本来あるべき子宮内腔以外にも病変が広がる状態を説明します。
また、
衝任不固(しょうにんふこ)
(衝脈・任脈が子宮を十分に支えられない状態)
が加わることで、
子宮の調節機能がさらに乱れ、
子宮内膜症の病態が進行すると考えられています。
③ 冷え(寒凝)が加わると強い痛みになる
体が冷えると、
寒邪(かんじゃ)が子宮に入り、
血流がさらに悪くなります。
寒には
- 凝滞(固める)
- 収引(縮める)という性質があります。
そのため、
瘀血はさらに強く固定され、血流が悪化します。
中医学では
「不通則痛(流れが悪いところには痛みが起こる)」と考えるため、
子宮内膜症にみられる
- 生理痛
- 下腹部痛
- 性交痛などの強い痛みは、
寒凝と瘀血が重なった結果と考えます。
④ 痰湿が加わると癒着や腫れが進む
脾虚(消化・吸収機能の低下)があると、
体内に余分な水分や老廃物がたまり、
痰湿(たんしつ)が作られます。
痰湿は粘り気があるため、
瘀血と結び付きやすく、
痰瘀互結(たんおごけつ)という状態になります。
この病理によって、
- 組織の肥厚
- 腫脹
- 癒着が起こりやすくなると考えられています。
3. 子宮内膜症の中医学的な病理のまとめ
子宮内膜症は、
複数の病理が重なって進行する病気と考えられています。
① ストレス
→ 肝鬱(肝の働きの低下)
→ 気滞(気の停滞)
→ 瘀血(血液の停滞)
② 瘀血が長期間続く
→ 久瘀化熱(停滞した血が熱を帯びる)
→ 血熱(血の熱)
③ 血熱
→ 血熱妄行(血が正常な流れを失う)
→ 衝任不固(衝脈・任脈の調節機能低下)
→ 子宮内膜症の病態が形成される
④ 冷え
→ 寒凝
→ 激しい月経痛・慢性骨盤痛
⑤ 脾虚
→ 痰湿
→ 痰瘀互結
→ 癒着・腫脹
4. 子宮筋腫と子宮内膜症の違い(中医学)
| 病理要素 | 子宮筋腫(癥瘕) | 子宮内膜症(痛経・癥瘕・血熱) |
| 主な病因 | 気滞・瘀血・痰湿 | 瘀血・血熱・寒凝・痰湿 |
| 衝任脈 | 血流が停滞し腫瘤が固定する | 調節機能が低下し病変が広がりやすい |
| 痛み | 固定した鈍い痛み・圧迫感 | 月経時の激しい周期性疼痛 |
| 主な病理 | 腫瘤(塊)の形成 | 炎症・癒着・強い痛み |
5. 瘀血から子宮筋腫・子宮内膜症へ進む流れ
① ストレス・冷え・過労・加齢
② 気滞・寒凝・脾虚・腎虚
③ 子宮の血流低下
④ 瘀血形成
ここから病理が二つに分かれます。
子宮筋腫
瘀血⇒痰湿⇒痰瘀互結⇒癥瘕(固定した腫瘤)⇒子宮筋腫
子宮内膜症
瘀血⇒久瘀化熱⇒血熱妄行・衝任不固⇒寒凝(強い痛み)+痰瘀互結(癒着・腫脹)
⇒子宮内膜症
子宮筋腫
瘀血が固まって塊(癥瘕)になる病気
子宮内膜症
瘀血が熱化して血熱となり
衝任脈の失調や寒凝・痰湿が加わって病変の広がり
癒着・強い痛みを生じる病気
現代医学との対比
血熱
炎症性サイトカイン(IL-1β、IL-6、TNF-α)
プロスタグランジンの産生亢進
痰湿
線維化・癒着
寒凝
骨盤内の血流低下や筋緊張による疼痛増悪
西洋医学では、
女性ホルモンの刺激や炎症によって
筋腫や内膜症が大きくなると考えられています。
中医学では、
その背景に
- 血流が悪い
- 冷え
- 気の巡りが悪い
- 炎症が長く続く ことで瘀血が作られると考えます。
西洋医学が病気そのものを見るのに対し、
中医学では
『なぜその環境になったのか』という体質まで整えていきます。
子宮筋腫という木を見るだけではなく
その木が育ってしまった土も一緒に改善していきましょう。
つまり
- 木=筋腫・内膜症(結果)
- 土=瘀血を作る体質(原因) です。
子宮筋腫や子宮内膜症は、長い年月をかけてできた「結果」です。
そのため治療は二本柱になります。
① 瘀血を作った原因
冷え・気滞・気虚・血虚・痰湿などを改善し
新しい瘀血を作らないこと。
② 今ある筋腫のもとになっている瘀血を少しずつ取り除く(活血・破血)こと。
この二つを同時に行うことで
「今ある病気」と「再びできやすい体質」の両方に働きかけることが
中医学治療の大切な考え方です。
子宮筋腫は「結果」であり
瘀血を作った体質こそが「原因」です。
原因が人によって異なる以上
治療も一人ひとり違う形になります。
だからこそ
問診で瘀血の原因を正確につかむことが
体質改善と再発予防の鍵になります。
中医学の治療は
筋腫そのものだけでなく
筋腫を育てた体質まで整えていくことができます。
焦らず・少しずつ・体の流れを取り戻していきましょう。
子宮内膜症は「結果」であり
瘀血を作った体質こそが「原因」です。
原因が人によって異なる以上
治療も一人ひとり違う形になります。
だからこそ
問診で瘀血の原因を正確につかむことが
体質改善と再発予防の鍵になります。
中医学の治療は痛みや癒着だけでなく
それを生み出した体質まで整えていくことができます。
焦らず・少しずつ・体の流れと温かさを取り戻していきましょう。


コメント