淋証(りんしょう):排尿障害を主症状とする病証
尿の頻度増加・排尿時の痛み・尿の濁りを伴うもの
現代医学:膀胱炎・尿道炎・腎盂腎炎・尿路結石 などに相当します。
中医学:膀胱の気化機能の失調や水湿の停滞が主な原因とされ、実証・虚証の両方が存在
☑ 淋証の分類と治療法
淋証は、熱淋・石淋・気淋・血淋・膏淋・労淋 に分類されます。
問診では、五臓・五志・六淫・七情・陰陽の虚実・痰飲・瘀血を考慮し
病理・悪化条件を見極めます。
目次
① 熱淋(ねつりん・湿熱による急性尿道炎)
🔹 病理
- 膀胱に湿熱が侵入し、気化機能が障害される。
- 急性の尿路感染症に相当。
🔹 悪化条件
- 辛いもの・酒・油っこいものの摂取
- 暑い環境・湿度の高い場所
- 性交渉後・ストレスによる熱の発生
🔹 問診のポイント
- 五臓: 肝・膀胱
- 五志: 怒り(肝火が膀胱に影響)
- 六淫: 湿熱
- 七情: 怒り・ストレスで悪化
- 陰虚・陽虚: 陽実(熱性)
- 痰飲: なし
- 瘀血: 長期化で発生
🔹 主な症状
- 排尿痛・尿の濁り(膿尿)
- 尿が黄色く臭いが強い
- 尿がしたたりすっきり出ない
- 発熱を伴うこともある
- 舌紅、苔黄膩
- 脈滑数
② 石淋(せきりん・尿路結石)
🔹 病理
- 湿熱が蓄積し、腎や膀胱に結石を形成。
- 尿の流れが滞り、痛みが強い。
🔹 悪化条件
- 水分不足(腎陰虚による尿濃縮)
- 辛いもの・動物性脂肪の摂取
- ストレス(気滞・肝鬱による尿流障害)
🔹 問診のポイント
- 五臓: 腎・膀胱
- 五志: 怒り・恐れ(腎・肝が影響)
- 六淫: 湿熱
- 七情: ストレスで悪化
- 陰虚・陽虚: 陰虚が多い
- 痰飲: なし
- 瘀血: あり(結石による損傷)
🔹 主な症状
- 腰腹部・下腹部の激痛(尿路結石)
- 血尿(尿道損傷)
- 排尿困難
- 舌紅、苔黄膩
- 脈滑数
③ 血淋(けつりん・尿に血が混じる)
🔹 病理
- 熱邪や瘀血が膀胱に影響し、血尿が発生。
🔹 悪化条件
- 辛いもの・酒の摂取
- 慢性炎症
🔹 問診のポイント
- 五臓: 肝・膀胱
- 五志: 怒り(肝火)
- 六淫: 熱邪
- 七情: ストレス
- 陰虚・陽虚: 陰虚(長期化で)
- 痰飲: なし
- 瘀血: あり
🔹 主な症状
- 尿が赤い(血尿)
- 排尿痛あり
- 舌紅、苔黄膩
- 脈弦数
★まとめ
淋証は湿熱・瘀血・気滞・陰虚などが関係し、適切な弁証論治が重要です。
淋証(膏淋)の中医学的診断
膏淋(こうりん):濁尿、特に尿に白濁・油様の分泌物が混じるタイプ
現代医学では尿路感染症:前立腺炎、膀胱炎、腎炎、慢性前立腺炎などに相当
膏淋の病理と分類
1. 湿熱による膏淋(湿熱下注)
🔹 病理
- 飲食不摂生(脂っこい・甘いものの過剰摂取)、湿熱が膀胱に侵入し、尿が濁る
- 性行為や長期の湿熱環境で悪化
🔹 悪化条件
- 油っこい食事、アルコール、甘いもの
- 長時間の座位・湿気の多い環境
- ストレス・怒り
🔹 問診のポイント
- 五臓: 肝・脾・膀胱
- 五志: 怒り(肝火)
- 六淫: 湿熱
- 七情: ストレスで悪化
- 陰虚・陽虚: 陽虚なし、陰虚なし
- 痰飲: なし
- 瘀血: あり(長期化すると瘀血を伴う)
🔹 主な症状
- 尿が濁って白っぽく油状(膏淋の特徴)
- 排尿時の灼熱感・不快感
- 尿が粘り気を帯び、尿道に違和感
2. 腎陰虚による膏淋(陰虚火旺)
🔹 病理
- 慢性化した膀胱炎や腎陰不足による虚熱が発生し、尿が濁る。
- 更年期や長期病後、慢性腎炎で起こりやすい。
🔹 悪化条件
- 過労・睡眠不足
- 夜間の排尿増加
- 辛いもの・アルコール摂取
- 長期の慢性病・ストレス
🔹 問診のポイント
- 五臓: 腎・肺・肝
- 五志: 不安・驚き(腎陰虚)
- 六淫: 燥邪・火邪
- 七情: 長期のストレス・疲労で悪化
- 陰虚・陽虚: 陰虚
- 痰飲: なし
- 瘀血: あり(長期化すると)
🔹 主な症状
- 尿が少なく、色が赤みを帯びる、または白濁
- 排尿痛は軽いが、頻尿
- 口渇・ほてり・寝汗・耳鳴り
- 舌紅、苔少(乾燥)
- 脈細数
3. 脾腎陽虚による膏淋(脾腎両虚)
🔹 病理
- 腎陽虚や脾気虚により、尿の輸送・排泄機能が低下し、尿が濁る。
- 慢性膀胱炎・慢性腎炎でよく見られる。
🔹 悪化条件
- 寒冷環境で悪化
- 過労・冷たい飲食物の摂取
- 長期間の病後や老化による体力低下
🔹 問診のポイント
- 五臓: 腎・脾
- 五志: 恐れ・思慮過度(腎陽虚・脾虚)
- 六淫: 寒邪
- 七情: 過労・長期ストレスで悪化
- 陰虚・陽虚: 陽虚
- 痰飲: なし
- 瘀血: なし
🔹 主な症状
- 尿が白濁し、量が多い(透明に近い)
- 倦怠感・冷え・下半身のむくみ
- 排尿時の痛みは軽度
- 舌淡胖、苔白滑
- 脈沈遅
☆まとめ
タイプ | 主な病理 | 症状 | 悪化条件 |
湿熱下注 | 膀胱の湿熱 | 排尿時の灼熱感、濃い黄色尿、尿の粘り | 辛いもの、湿気、ストレス |
陰虚火旺 | 腎陰不足の虚熱 | 夜間頻尿、尿が赤み・白濁、ほてり | 過労、睡眠不足 |
脾腎陽虚 | 腎陽不足と脾気虚 | 透明に近い白濁尿、冷え・倦怠感 | 寒冷環境、長期の病後 |
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