中医学における咽痛の考え方
咽痛は主に肺・腎・胃の失調と関連
外感邪気(風熱・燥邪)や内因(陰虚・肝火・痰湿)によって発生
五臓のうち特に肺・腎・胃の状態を重視し、気血の滞りや陰虚の有無を確認すること
目次
咽痛の中医学的分類
1. 外感咽痛(風邪や気候の影響による咽痛)
- 風熱犯肺(かぜや熱邪による急性のどの痛み)
- 風燥犯肺(乾燥によるのどの痛み)
2. 内傷咽痛(臓腑の失調による慢性のどの痛み)
- 肺陰虚(陰虚による乾燥したのどの痛み)
- 胃熱上炎(暴飲暴食やストレスによるのどの痛み)
- 肝火犯肺(ストレス・怒りによるのどの痛み)
- 痰湿鬱結(湿痰によるのどの違和感)
- 瘀血阻滞(血瘀による慢性のどの痛み)
風熱犯肺(ふうねつはんはい)
病理
風熱邪が肺に侵入し、肺気の失調によってのどの炎症を引き起こす。
🩺 主な症状
主な症状
- のどの強い痛み、赤く腫れる
- 発熱、軽い悪寒
- 黄色い痰が絡む、口渇
- 舌質は紅、苔は薄黄
⚠️ 悪化条件
- 熱いものや辛い食べ物で悪化
- 風邪の初期・中期に多い
❓ 問診のポイント
- 急性の発症か?
- 熱感や喉の腫れはあるか?
- 風邪の症状を伴うか?
風燥犯肺(ふうそうはんはい)
🔍 病理
乾燥した空気や燥邪が肺に影響し、のどの粘膜を傷つける。
🩺 主な症状
- 乾燥したのどの痛み、赤みは軽度
- 乾いた咳、痰が少ない
- 口や鼻の乾燥
- 舌質は紅、苔は薄く乾燥
⚠️ 悪化条件
- 乾燥した環境で悪化
- 秋や空気が乾燥する時期に多い
❓ 問診のポイント
- 乾燥した場所で症状が悪化するか?
- 咳が乾いた咳か?
- 口や鼻の乾燥があるか?
肺陰虚(はいんきょ)
🔍 病理
慢性的な陰虚によって肺が乾燥し、のどが痛む。
🩺 主な症状
- のどの乾燥、ヒリヒリする痛み
- 空咳、声がかすれる
- 寝汗、頬の紅潮
- 舌質は紅、苔は少ない
⚠️ 悪化条件
- 夜間、乾燥した環境で悪化
- 辛い食べ物で悪化
❓ 問診のポイント
- 乾いた咳や声のかすれがあるか?
- 口渇や寝汗はあるか?
胃熱上炎(いねつじょうえん)
🔍 病理
暴飲暴食や辛い食べ物により胃に熱がこもり、熱がのどに影響する。
🩺 主な症状
- 強いのどの痛み、口が苦い
- 口臭、口渇、便秘
- 舌質は紅、苔は黄厚
⚠️ 悪化条件
- 辛い・脂っこい食べ物で悪化
- 熱い環境で悪化
❓ 問診のポイント
- 辛いものをよく食べるか?
- 便秘や口臭はあるか?
瘀血阻滞(おけつそたい)
🔍 病理
血瘀によってのどの血流が悪くなり、慢性的な炎症を引き起こす。
🩺 主な症状
- 慢性的なのどの痛み
- のどの腫れや違和感
- 舌質は紫暗、瘀点あり
⚠️ 悪化条件
- 夜間や運動後に悪化
- 血行不良のときに痛みが増す
咽痛は単なる風邪だけでなく、肺陰虚・胃熱・瘀血など多くの原因で発生
肺腎陰虚による咽痛の中医学的解説
1. 肺腎陰虚による咽痛とは?
肺と腎の陰液が不足すると、陰虚内熱(内部の熱)が発生
慢性的なのどの乾燥や痛みを引き起こします。
長期の咽痛・声のかすれ・口や喉の乾燥・寝汗
中医学では「肺は腎に根ざす(肺は腎の陰に依存している)」と考え
肺陰が不足すると腎陰も損なわれるため、肺腎を同時に補う治療が重要。
2. 肺腎陰虚の病理
🔍 病因
- 長期の慢性病(結核・慢性気管支炎など)
- 喉の酷使(歌手・教師・演説など)
- 加齢や過労による腎陰の消耗
- 長期のストレスや情緒不安(七情の影響)
🩺 主な症状
- 慢性的なのどの痛み(ヒリヒリする・灼熱感)
- 声のかすれ・喉の乾燥
- 空咳(痰が少なく粘る)
- 寝汗・ほてり・手足の熱感
- 舌質は紅く、舌苔が少ない
⚠️ 悪化条件
- 夜間や乾燥した環境で悪化
- 長時間の会話や歌唱後に悪化
- 辛い食べ物や熱いものを食べると悪化
❓ 問診のポイント
- のどの痛みは慢性的か?
- 寝汗、ほてり、手足の熱感はあるか?
- 長期的な咳や声のかすれがあるか?
肺腎陰虚の咽痛は慢性的な乾燥と炎症が特徴
陰を補うことが最も重要です。
肺腎陰虚による咽痛の中医学的解説
1. 肺腎陰虚による咽痛の病理
🔹 病因(五臓・五志・六淫・七情)
- 五臓: 肺腎両虚(肺陰虚と腎陰虚が共存)
- 肺陰虚 → 津液不足でのどの乾燥・咽痛
- 腎陰虚 → 虚熱(陰不足による熱)が発生し、慢性的な炎症を促進
- 五志: 長期間のストレス(怒・憂)が陰を消耗し、腎陰不足を悪化させる
- 六淫: 乾燥(燥邪)が津液を奪い、咽痛を助長
- 七情: 長期の過労・睡眠不足・情緒不安(心配しすぎ、怒りやすい)で腎陰を消耗し、陰虚内熱を引き起こす
2. 主な症状
項目 | 特徴 |
のどの痛み | ヒリヒリ・灼熱感、乾燥、慢性的で悪化しやすい |
声 | かすれやすい、枯れる |
口・のど | 乾燥感(水を飲んでも潤わない) |
咳 | 空咳(痰が少ない・粘る) |
その他 | 寝汗、ほてり、手足の熱感、微熱 |
舌診 | 紅色・苔が少ない(陰虚の特徴) |
脈診 | 細・数(陰虚の特徴) |
3. 悪化条件
- 夜間や乾燥した環境(エアコン・冬場など)で悪化
- 長時間の会話・発声で悪化
- 辛い食べ物や刺激物で悪化
- 疲労時・睡眠不足時に悪化
4. 問診のポイント
- のどの痛みは長期間続いているか?
- 乾燥感があり、水を飲んでも改善しないか?
- 夜間のほてり・寝汗があるか?
- 咳は乾燥していて痰が少ないか?
お悩みの症状がございましたら、ぜひご相談ください。
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