胃脘痛(みぞおちの痛み)は、中医学では「胃痛」とも呼ばれ、主に脾胃(消化器系)の機能失調によって引き起こされます。
以下に、主な病因病機を弁証し、それに対応する処方を示します。
目次
1. 寒邪犯胃(かんじゃはんい)
病理・病機
外寒(寒冷の食事・寒邪の侵入)が胃に侵入し、胃気の運行を阻害して痛みを引き起こす。寒邪は凝滞性があり、気血の流れを阻害する。
症状
- 胃痛が強く、冷たいものを摂取すると悪化
- 温めると楽になる(温罨法【おんあんぽう】で軽減)
- 吐き気、嘔吐
- 舌質淡・苔白・脈沈緊
悪化条件
冷飲食、寒冷環境、冷房、夜間
問診のポイント
- 冷たいものを食べた後に痛みが増すか
- 温めると痛みが軽減するか
- 冷え性か
2. 飲食停滞(いんしょくていたい)
病理・病機
暴飲暴食、不消化物が胃内に停滞し、気機を阻滞する
症状
- 食後の膨満感、ゲップ、腐臭のある口臭
- 吐き気、嘔吐、便秘または下痢
- 舌苔厚膩、脈滑
悪化条件
食べ過ぎ、脂っこいもの・甘いものの摂取
問診のポイント
- 食後の痛みか
- 消化不良の自覚があるか
3. 肝気犯胃(かんきはんい)(七情:怒り)
病理・病機
ストレス・怒りにより肝気が鬱結し、胃を攻撃する(肝胃不和)
症状
- 胃脘部の張りと痛み
- ストレスや怒りで悪化
- ゲップやため息が多い
- 舌辺が赤く、苔薄白または薄黄、脈弦
悪化条件
精神的ストレス、不安、怒り
問診のポイント
- ストレスが関係しているか
- イライラしやすいか
4. 胃陰虚(い いんきょ)
病理・病機
陰虚により胃の潤いが不足し、虚熱を生じる
症状
- 乾燥感、口渇
- 胃痛があり、空腹時に悪化
- 舌紅少苔、脈細数
悪化条件
空腹時、熱性食品の摂取
問診のポイント
- 口の渇きがあるか
- 空腹時に悪化するか
5. 脾胃虚寒(ひいきょかん)(陽虚)
病理・病機
陽気不足により胃が冷えて機能が低下
症状
- 温めると楽になる胃痛
- 手足が冷たい
- 食後に疲れやすい
- 舌質淡、苔白、脈沈遅
悪化条件
冷飲食、寒冷環境
問診のポイント
- 手足が冷えるか
- 温めると楽になるか
6. 瘀血阻滞(おけつそたい)
病理・病機
瘀血により胃の経絡が詰まり、血行不良が生じる
症状
- 固定性の刺すような痛み
- 夜間に悪化
- 舌紫暗、瘀点あり、脈渋
悪化条件
夜間、長期にわたる胃の不調
問診のポイント
- 刺すような痛みか
- 舌の色が暗いか
まとめ
胃脘痛の治療は、寒熱・虚実・気血水の視点から弁証を行い、適切な処方を選ぶことが重要です。
また、飲食・情志・環境因子を考慮して生活指導を行うことで、治療効果を高めることができます。
ご相談お待ちしています。
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