ストレスが関与する腰痛を中医学の視点から考えると
五臓・五志・六淫・七情・陰虚・陽虚・痰飲・瘀血の各概念と関連して解釈できます。
目次
1. 病因と病機の考察
(1) 五臓と腰痛
- 肝:「肝主疏泄」「肝主筋」
→ ストレスで肝気が鬱滞すると、筋肉がこわばり腰痛が発生 - 腎:「腎主骨」「腰は腎の府」
→ 腎虚により腰部の支持力が低下し、慢性的な腰痛が発生 - 脾:「脾主運化」
→ ストレスで脾気が弱ると、痰湿が溜まりやすく、重だるい腰痛を生じる
(2) 五志(感情と五臓の関係)
- 怒(肝):ストレスで「肝気鬱結」→ 気滞血瘀 → 血流が滞り腰痛が悪化
- 思(脾):過度な思考で「脾気虚」→ 痰湿停滞 → 腰が重く痛む
- 恐(腎):長期的なストレスや不安が「腎気虚」→ 骨や筋の弱化 → 慢性的な腰痛
(3) 六淫(外的要因)
- 風寒:冷えにより「陽気が阻滞」し、気血の巡りが悪化 → 冷えると悪化する腰痛
- 湿邪:長時間座りっぱなし・湿度の高い環境 → 水湿が滞り、重だるい腰痛
(4) 七情(情志と病理)
ストレスによる気滞、血瘀、痰湿の滞りが腰痛を引き起こす。特に肝気鬱結は重要な要因。
2. 証型別の分析
(1) 肝気鬱結型(ストレス由来の筋緊張)
症状:腰の張りや痛み、気分の落ち込み、ため息が多い、イライラ
病機:「肝気鬱結 → 気滞血瘀」
(2) 肝腎陰虚型(ストレス+過労による慢性腰痛)
症状:腰のだるさ、足腰の無力感、めまい、耳鳴り、寝汗、不眠
病機:「肝腎陰虚 → 筋骨失養」
(3) 瘀血型(血行不良による慢性腰痛)
症状:刺すような腰痛、夜間に悪化、押すと痛む
病機:「瘀血阻絡」
(4) 痰湿型(ストレス+水湿停滞)
症状:腰の重だるさ、むくみ、動くと悪化、舌苔が厚い
病機:「痰湿阻滞 → 気血不暢」
(5) 腎陽虚型(腎陽不足による腰の冷え)
症状:腰の冷え、寒がり、倦怠感、夜間頻尿
病機:「腎陽虚 → 命門火衰」
3. まとめ
証型 | 主な症状 | 病機 |
肝気鬱結 | ストレス、筋緊張、張る痛み | 気滞血瘀 |
肝腎陰虚 | だるい腰痛、寝汗、耳鳴り | 筋骨失養 |
瘀血 | 刺すような痛み、夜悪化 | 瘀血阻絡 |
痰湿 | 重だるい痛み、舌苔厚い | 痰湿阻滞 |
腎陽虚 | 冷えによる腰痛、夜間頻尿 | 命門火衰 |
ストレスによる腰痛
主に「肝気鬱結」によるものが多く
それが長引くと「瘀血」や「腎虚」に移行
慢性化すると
「肝腎陰虚」や「腎陽虚」に進みやすく、個々の体質に応じた治療が必要となります。
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