黄斑変性症は
加齢とともに増える代表的な眼の病気ですが、
その背景には「酸化ストレス」「慢性炎症」「微小循環障害」など
全身の変化が深く関わっています。
西洋医学では病変そのものを抑える治療が中心ですが、
中医学では体質や循環の乱れを整えることで
病気の進行を緩やかにする視点を持ちます。
黄斑変性症を 西洋医学と中医学の両面から統合的にお伝えいたします。
黄斑変性症について
1.黄斑変性症の原因と症状
黄斑変性症は、網膜の中心部である「黄斑」が障害される病気であり、
加齢とともに発症しやすくなる代表的な眼疾患です。
黄斑は「見る力」の中心を担う部位であり、
文字を読む・顔を識別する・色を認識するなどの精密な視覚機能に関わっています。
◇主な原因
- 加齢による網膜色素上皮細胞(RPE)の機能低下
- 酸化ストレス(ROS増加)
- 慢性炎症
- 脈絡膜循環低下
- VEGF(血管内皮増殖因子)増加による異常血管新生
- オートファジー低下などが関与すると考えられています。
特に、網膜色素上皮細胞が老化すると、視細胞外節の処理能力が低下し、老廃物が蓄積します。
その結果、「ドルーゼン」と呼ばれる沈着物が形成され、
酸素や栄養の供給障害を引き起こします。
さらに低酸素状態になると、VEGFが増加し、脈絡膜新生血管が発生します。
この新生血管は非常に脆いため、漏出や出血を起こし、視機能障害を進行させます。
◇主な症状
- 中心が見えにくい(中心暗点)
- 物が歪んで見える(変視症)
- 視力低下
- 色覚異常
- コントラスト感度低下などがみられます。
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2.黄斑変性症の検査所見
黄斑変性症では、眼底検査やOCT(光干渉断層撮影)などで特徴的な所見が認められます。
(ア)ドルーゼン
ドルーゼンは、網膜色素上皮とブルッフ膜の間に蓄積する老廃物です。
主成分として、脂質・酸化蛋白・ビタミンA代謝産物が含まれます。
ドルーゼンが増加すると、酸素や栄養の拡散障害が起こり、網膜の低酸素化を招きます。
(イ)網膜浮腫
脈絡膜新生血管から血漿成分が漏出すると、網膜内に水分が貯留し「網膜浮腫」を生じます。
OCTでは、網膜肥厚・漿液性網膜剥離などが観察されます。
(ウ)脈絡膜新生血管
低酸素刺激によりVEGFが増加すると、脈絡膜側から異常血管が侵入します。
この血管は未熟で脆弱であるため、漏出・浮腫・出血を起こしやすい特徴があります。
(エ)出血
新生血管破綻により、網膜下出血・網膜内出血が発生します。
出血は視細胞障害を強く引き起こし、急激な視力低下の原因となります。
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3.黄斑変性症の分子マーカー
黄斑変性症では、慢性炎症・酸化ストレス・血管新生に関わる分子異常が認められます。
(ア)VEGF上昇
VEGF(Vascular Endothelial Growth Factor)は低酸素刺激で増加する血管新生因子です。
VEGF増加により、新生血管形成・血管透過性亢進・浮腫形成が起こります。
(イ)炎症性サイトカイン
慢性炎症により、IL-6・TNF-α・IL-1βなどの炎症性サイトカインが増加します。
これらは血管透過性や組織障害を促進し、病態を悪化させます。
(ウ)ROS(活性酸素種)増加
ROSの増加は、黄斑変性症の重要な病態です。
網膜は、高酸素環境・紫外線曝露・多価不飽和脂肪酸(DHA)が豊富という特徴を持つため、
酸化ストレスに非常に弱い組織です。ROS増加により、
ミトコンドリア障害・脂質過酸化・細胞死が誘導されます。
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4.黄斑変性症の治療
(ア)西洋医学
抗VEGF療法現在の中心的治療です。
VEGFを抑制することで、新生血管抑制・漏出抑制・浮腫軽減を目的とします。
代表薬:アフリベルセプト・ラニビズマブ・ファリシマブなどがあります。
●レーザー治療
異常血管に対してレーザー照射を行い、病変進行を抑制します。
ただし中心窩近傍では視機能障害のリスクもあるため、適応は慎重に判断されます。
(イ)中医学
中医学では、黄斑変性症を「目だけの病気」とは考えず、肝・腎・血流・気血津液の失調として捉えます。
肝気鬱血
- ストレスや気滞により血流障害が起こる状態です。脈絡膜循環障害や微小循環低下との関連が考えられます。
肝腎陰虚
- 加齢に伴う「潤い・栄養不足」の状態です。網膜組織の栄養低下、酸化ストレス耐性低下と関連づけて考えることができます。
瘀血
- 微小循環障害・慢性炎症・血液粘稠性亢進などを含む概念です。脈絡膜循環低下や低酸素状態との関連が考えられます。
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黄斑変性症は、加齢・酸化ストレス・慢性炎症・VEGF増加・微小循環障害などが複雑に関与して進行する疾患です。
西洋医学では、抗VEGF療法・レーザー治療などにより、結果として現れている
「新生血管」「浮腫」「出血」を直接抑制します。
一方、中医学では、肝気鬱血・肝腎陰虚・瘀血などの観点から、
背景にある体質や循環障害、慢性炎症状態へのアプローチを行います。
つまり、西洋医学が「結果への治療」を担い、中医学が「原因や体質への調整」を担うことで、
両者は相補的な関係となります。
西洋医学と中医学の統合治療は、
原因と結果の両面から黄斑変性症の進行抑制を目指すという意味で、
非常に理にかなった組み合わせであると考えます。
黄斑変性症は不安の大きい病気ですが
治療法は進歩し続けています。
西洋医学で病変を抑えつつ
中医学で体の巡りやバランスを整えることで
できることは確実に増えています。
目と体の両方を大切にすることが
進行をゆるやかにし
生活の質を守る力になります。


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