耳鳴の中医的概念
耳は腎に属し、気血の巡りや五臓六腑の状態に影響を受ける
耳鳴の主な原因は 腎虚、肝火、脾虚、痰湿、瘀血 に分類
問診では
五臓(肝・腎・脾・心・肺)
五志(怒・喜・思・憂・恐)
六淫(風・寒・暑・湿・燥・火)
七情(怒・喜・思・憂・悲・恐・驚)
陰虚・陽虚・痰飲・瘀血 を考慮して治療方針を決定します。
目次
肝火上炎(かんかじょうえん)
症状
- 突発性の高音の耳鳴り(キーン、ピー)
- 怒りやすい、イライラ、ため息が多い
- 頭痛、目の充血、口が苦い
- 顔が赤く、口が渇く
- 便秘や黄っぽい尿
病理
- ストレスや怒り → 肝の気が滞りやすくなり、肝火が上昇
- 肝が上炎し、耳へ熱が集まる → 突発的な耳鳴り
悪化条件
- 怒りやストレス(肝気鬱結→肝火)
- 夜更かし・アルコール・辛い食べ物(熱がこもる)
問診のポイント
- イライラしやすいか?(肝火)
- 耳鳴りはストレスで悪化するか?(気滞→火)
- 目が充血しやすいか?(肝火上炎)
腎虚(じんきょ)
症状
- 低音の耳鳴り(ブーン、ザー)
- 耳鳴りが長引く・加齢による耳鳴り
- 腰や膝がだるい、足が冷える
- 夜間頻尿、記憶力低下、精力減退
- 疲れやすく、耳が詰まる感じ
病理
- 腎は耳を司る → 腎精不足により耳の栄養が足りず耳鳴が発生
- 腎陽虚 → 冷えや倦怠感
- 腎陰虚 → ほてり、のぼせ
悪化条件
- 加齢(腎精の不足)
- 過労・夜更かし(腎精の消耗)
問診のポイント
- 腰がだるいか?(腎虚)
- 耳鳴りは疲れると悪化するか?(腎精不足)
- 冷えやのぼせのどちらがあるか?(陰虚・陽虚の区別)
脾胃気虚(ひいききょ)
症状
- 耳鳴りが断続的に続く(ボワンボワン)
- 疲れやすく、食欲不振
- 胃腸が弱く、軟便や下痢
- 顔色が青白く、むくみやすい
病理
- 脾は気血を作る → 気血不足により耳が栄養不足
- 気虚により気の巡りが悪くなり耳鳴り発生
悪化条件
- 空腹時や疲労時(気血不足)
- 食べ過ぎ(脾の負担増)
問診のポイント
- 食欲不振か?(脾虚)
- 疲れやすいか?(気虚)
- 耳鳴りは空腹時に悪化するか?(脾胃気虚)
痰湿阻滞(たんしつそたい)
症状
- 耳が詰まった感じの耳鳴り
- めまい・ふらつき・吐き気
- 体が重だるく、むくみやすい
- 舌苔が厚く、白っぽい
病理
- 脾虚による水湿の停滞 → 体内の痰湿が耳に停滞し、耳鳴りを引き起こす
悪化条件
- 湿気の多い環境(痰湿の停滞)
- 油っこい食事・冷たい飲食(痰湿が増加)
問診のポイント
- めまいがあるか?(痰湿)
- 体が重だるいか?(痰湿)
- 舌苔が厚いか?(湿邪)
まとめ
耳鳴りの治療は 証に応じた処方選びが重要 です。
- 高音の耳鳴り → 肝火・陰虚 実熱or虚熱
- 低音の耳鳴り → 腎虚・痰湿 虚寒or痰飲
- 食後・倦怠感で悪化 → 脾虚・痰湿
- 加齢や慢性化 → 腎虚
以上が臓腑と耳鳴り
風熱侵入・風邪による耳鳴りの中医学的アプローチ
耳鳴の中医的概念
耳は腎に属し、五臓六腑のバランスが乱れると耳鳴が発生
風熱や風寒が侵入すると、経絡の流れが阻害され、耳に影響を及ぼし耳鳴が起こる
風熱侵入や風邪による耳鳴りは、外感(外邪の侵入) による
風熱・風寒・痰湿 などの影響を受けます。
風熱侵入(ふうねつしんにゅう)
症状
- 急性の高音の耳鳴り(キーン、ピー)
- 発熱、悪寒、喉の痛み、黄色い痰
- 頭痛、目の充血
- 口が渇く、汗をかきやすい
- 耳が腫れぼったく、痛みがある場合も
病理
- 風熱邪が体表から侵入し、肺・胆経を犯す
- 経絡の流れが阻害され、耳に熱がこもる → 耳鳴り発生
- 風熱が長引くと肝胆の火が盛んになり、耳鳴りが持続する
悪化条件
- 外風(冷たい風、エアコン、強風)
- 炎症が進行すると悪化(放置すると肝胆火に移行)
- 熱性食品(辛いもの、揚げ物、酒)を摂ると悪化
問診のポイント
- 耳鳴りの前に風邪をひいたか?(風熱の影響)
- 発熱・のどの痛みはあるか?(風熱)
- 耳鳴りは熱がこもった感じか?(熱邪)
風寒侵入(ふうかんしんにゅう)
症状
- 突然の低音耳鳴り(ブーン、ザー)
- 悪寒、発熱(軽度)、鼻水(透明)
- 身体の冷え、関節の痛み
- 咳や痰が少なく、喉の痛みは軽い
病理
- 風寒邪が体表から侵入し、経絡を塞ぐ
- 気血の流れが悪くなり、耳の循環が低下 → 耳鳴り発生
悪化条件
- 寒さ(冷気・冷たい飲食)で悪化
- 身体を温めると改善
- 寒湿が体に溜まると長引く
問診のポイント
- 風邪を引いた後に耳鳴りが出たか?(風寒の影響)
- 耳鳴りは寒さで悪化するか?(風寒)
- 悪寒や関節痛があるか?(寒邪の影響)
風湿阻滞(ふうしつそたい)
症状
- 耳が詰まる感じがする耳鳴り(ボワンボワン)
- 湿気の多い時期や雨の日に悪化
- 頭が重く、めまいがする
- 食欲不振、軟便、むくみやすい
病理
- 風湿邪が侵入し、経絡を阻害
- 気血の流れが悪くなり、耳の機能が低下 → 耳鳴り発生
- 長引くと痰湿が溜まり、慢性的な耳閉感に移行
悪化条件
- 湿気(梅雨・台風・雨の日)で悪化
- 消化不良(食べ過ぎ、冷たい飲食)で悪化
- 運動不足で悪化
問診のポイント
- 耳鳴りは湿気の多い日に悪化するか?(風湿)
- 胃腸が弱いか?(脾虚・湿邪)
- 頭が重く感じるか?(湿邪)
まとめ
風邪や風湿が影響する耳鳴りは、外邪を取り除き、気血の巡りを良くすることが重要 です。
- 急性の高音耳鳴り+喉の痛み → 風熱侵入(銀翹散)
- 低音耳鳴り+悪寒・寒気 → 風寒侵入(荊防敗毒散)
- 耳詰まり+雨の日に悪化 → 風湿阻滞(藿香正気散)
早めの治療が大切!長引くと慢性化しやすい
風邪侵入の初期段階で対応するのが理想的です。
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