泄瀉（下痢）の中医学的診断

泄瀉（下痢）の中医学的診断と治療法

泄瀉（下痢）は、中医学において脾胃の失調や外邪の侵入によって生じる

五臓・五志・六淫・七情・陰陽の虚実、痰飲、瘀血などから 具体的な型を分類し、診断法を解説します。

① 寒湿泄瀉（かんしつせっしゃ）

病理

• 主に脾陽の不足や外邪（寒湿）の侵入による。
• 寒湿が中焦（脾胃）に停滞し、消化機能が低下。
• 腸が冷えて蠕動運動が異常になり、泄瀉を引き起こす。

悪化条件

• 冷たい食べ物の摂取
• 寒冷環境での生活
• 過労や睡眠不足（脾陽虚の悪化）

問診のポイント

• 五臓: 脾陽虚（脾の働きが弱い）
• 五志: 思慮過度（脾気を消耗）
• 六淫: 寒湿の影響（冷え、湿気の多い環境）
• 七情: 過度な心配や憂うつ
• 陰虚・陽虚: 陽虚（特に脾陽虚）
• 痰飲: 水湿の滞りあり
• 瘀血: なし（基本的には関係ないが、慢性化すると瘀血になる可能性あり）

主な症状

• 水様便（未消化物を含む）
• 腹痛（温めると軽減）
• 四肢の冷え
• 舌淡胖、白滑苔
• 脈沈遅
• 臭いは少ない

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② 湿熱泄瀉（しつねつせっしゃ）

病理

• 湿熱が腸胃に滞留し、正常な消化機能を阻害。
• 多くは暴飲暴食や辛辣な飲食、あるいは外感湿熱による。

悪化条件

• 辛い食べ物や油っこい食事
• 暑湿の環境
• 精神的なストレス（肝火の影響）

問診のポイント

• 五臓: 脾胃の湿熱、肝胆の熱邪
• 五志: 怒り（肝火旺）
• 六淫: 湿熱（暑湿環境）
• 七情: イライラやストレス
• 陰虚・陽虚: なし（熱証のため）
• 痰飲: あり（湿邪による）
• 瘀血: なし（急性期では関係なし）

主な症状

• 泥状または水様便（悪臭が強い）悪臭
• 腹部膨満感
• 肛門の灼熱感
• 口渇（冷たいものを欲する）
• 小便短赤
• 舌紅、苔黄膩
• 脈滑数

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③ 肝気犯脾泄瀉（かんきはんぴせっしゃ）

病理

• 精神的ストレスや肝気鬱結が脾胃を攻撃し、消化機能が低下。
• 情緒の影響が大きい（ストレスによる下痢）。

悪化条件

• 精神的ストレス
• 怒り、抑うつ
• 長時間の緊張状態

問診のポイント

• 五臓: 肝気鬱結、脾虚
• 五志: 怒り、ストレス
• 六淫: なし（主に内因）
• 七情: 情緒の影響大
• 陰虚・陽虚: なし
• 痰飲: なし
• 瘀血: 長期間のストレスで瘀血を伴う可能性あり

主な症状

• 腹痛（ストレスで悪化）
• 胸脇張悶
• ゲップ
• 食後すぐの泄瀉
• ガスが多い
• ため息をよくつく
• 舌淡紅、苔薄白
• 脈弦

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④ 脾胃虚弱泄瀉（ひいききょじゃくせっしゃ）

病理

• 脾気不足により水湿の運化が悪化し、消化不良が起こる。

悪化条件

• 過労
• 長期間の病後
• 加齢による消化機能低下

問診のポイント

• 五臓: 脾虚（消化不良）
• 五志: 思慮過度（脾気を消耗）
• 六淫: なし（主に内因）
• 七情: 過労による脾気虚
• 陰虚・陽虚: 陽虚寄り
• 痰飲: あり（消化不良による）
• 瘀血: なし

主な症状

• 慢性的な軟便
• 軟便・水様便・便秘と変化する
• 食欲不振
• 疲れやすい
• 顔色が悪い　萎黄
• 舌淡胖、苔薄白
• 脈緩弱

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まとめ

泄瀉の治療は原因に応じた処方選択が重要です。
問診では五臓・五志・六淫・七情を考慮し、病理と悪化条件を見極めましょう。