動悸(心悸)は中医学
「心悸(しんき)」や「怔忡(せいちゅう)」
気血の不足、陰陽の失調、痰飲の停滞、瘀血の滞り などが主な原因です。
目次
Ⅰ. 気血両虚(心血不足による動悸)
(心血が不足し、心が十分に養われないタイプ)
症状
- 動悸が持続的に続く
- 不安感や驚きやすさ
- 顔色が蒼白、めまい
- 眠りが浅い、不眠
- 疲れやすく、息切れ
- 舌質:淡、苔:薄白、脈:細弱
病理
- 心血不足により、心の安定が失われる
- 気虚を伴うと、心が十分なエネルギーを得られず動悸が生じる
悪化条件
- 過労や睡眠不足で悪化
- 精神的なストレスで動悸が強くなる
問診のポイント
- 疲れやすいか?
- 不安を感じやすいか?
- 睡眠の質はどうか?
Ⅱ. 陰虚火旺(陰虚による動悸)
(陰液不足による心火の過剰な動悸)
症状
- 動悸が夜に悪化する
- 口の渇き、微熱、寝汗
- 不眠(特に入眠困難)
- 焦燥感、ほてり、イライラ
- 舌質:紅、苔:少、脈:細数
病理
- 心陰虚により、心火が過剰になり、動悸を引き起こす
- 腎陰虚を伴うことが多く、寝汗や微熱も生じる
悪化条件
- 夜になると動悸が悪化
- ストレス・過労・暑さで悪化
問診のポイント
- 夜の動悸はあるか?
- 寝汗や口の渇きがあるか?
- 焦燥感やイライラがあるか?
Ⅲ. 痰飲停滞(痰湿が心を阻害する動悸)
(体内の痰湿が滞り、心気の巡りを妨げるタイプ)
症状
- 胸が詰まり、動悸が強い
- めまい、吐き気、頭が重い
- 痰が多く、咽喉の不快感
- 冷えや湿気で症状悪化
- 舌苔:白膩、舌質:淡胖、脈:滑
病理
- 痰湿が心を覆い、心気の流れを妨げる
- 脾の機能低下が原因で、水分代謝が悪化し、痰湿が生じる
悪化条件
- 湿気が多いと悪化
- 冷たい飲食物で悪化
問診のポイント
- 痰が多いか?
- 湿気や天候で症状が変化するか?
Ⅳ. 瘀血阻滞(血の巡りが悪くなる動悸)
(血流の滞りが原因の動悸)
症状
- 刺すような胸痛を伴う動悸
- 唇や舌が暗紫色
- 四肢の冷え、顔色が黒ずむ
- 静脈のうっ血が見られる
- 舌質:紫暗、舌下静脈怒張、脈:渋または結代
病理
- 血瘀により、心の血流が悪くなり、動悸が発生する
- 動脈硬化・心疾患リスクも考えられる
悪化条件
- 寒冷環境で悪化
- 運動後に動悸がひどくなる
問診のポイント
- 刺すような痛みを伴うか?
- 唇や舌の色は暗くないか?
- 四肢の冷えはあるか?
☆まとめ
タイプ | 特徴 |
気血両虚 | 貧血、疲れやすい |
陰虚火旺 | 口渇、寝汗、夜の動悸 |
痰飲停滞 | 痰が多い、胸が詰まる |
瘀血阻滞 | 刺すような胸痛、紫舌 |
Ⅴ. 心陽虚(陽気不足による動悸)
(心陽が不足し、血流が弱まることで発生する動悸)
症状
- 動悸が軽度で持続的
- 胸が苦しく、冷えを感じる
- 手足が冷たい、顔色が青白い
- 疲労感が強く、息切れがしやすい
- めまい、冷えによる悪化
- 舌質:淡胖(腫れぼったい)、舌苔:白、脈:遅または微弱
病理
- 心陽が不足すると心の血流を推動する力が低下し、動悸が発生
- 寒邪が加わると心陽がさらに損なわれる
悪化条件
- 寒冷環境で悪化
- 疲労が蓄積すると動悸が強くなる
問診のポイント
- 手足の冷えがあるか?
- 疲れやすくないか?
- 寒さで症状が悪化するか?
Ⅵ. 肝鬱(気滞による動悸)
(ストレスや情志の変動が原因で起こる動悸)
症状
- ストレスを感じたときに動悸が起こる
- イライラしやすく、ため息が多い
- 胸や脇が張る感じがする
- 食欲が低下する、消化不良
- 女性の場合、生理前に悪化する
- 舌質:淡紅、舌苔:薄白または薄黄、脈:弦
病理
- 肝気がうっ滞すると、心を正常に養えなくなり動悸が発生
- ストレスが気滞を悪化させ、動悸が頻発する
悪化条件
- ストレスや精神的緊張で悪化
- 過労や睡眠不足で悪化
問診のポイント
- ストレスを感じやすいか?
- 胸が張る感じがあるか?
- ため息が多いか?
- 食欲に変化があるか?
★まとめ
タイプ | 特徴 |
心陽虚 | 冷え、疲れやすい、持続的な動悸 |
肝鬱 | ストレスで悪化する動悸、ため息、胸の張り |
心陽虚の場合は 「温めて補う」、肝鬱の場合は 「気を巡らせる」 ことが治療のポイントです。
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