漢方では
同じ「目の疲れ」や「不眠」といった症状でも
その背景にある原因や体質によって治療方針が異なります。
これを見分ける作業を「鑑別」と言います。
特に肝に関わる病態では
肝血虚・肝陰虚・肝腎虚という三つのタイプが
臨床でよく問題となります。
それぞれの症状・舌脈・病理的特徴を整理し
肝血虚・肝陰虚・肝腎虚の鑑別
肝血虚・肝陰虚・肝腎虚の症状・舌・主要臓腑の特徴などを整理しました。
目次
■ 肝血虚・肝陰虚・肝腎虚 鑑別表
| 鑑別 | 主な症状 | 目(竅) | 情緒・精神 | 四肢・筋 | 舌・脈 | 病理の特徴 |
| 肝血虚 | めまい、立ちくらみ、顔色淡白、爪や髪の乾燥 | かすみ目、夜盲 | 軽度不安・神経過敏 | 手足のしびれ、こむら返り、筋肉のこわばり | 舌淡、舌体細、脈細 | 血の不足による栄養不足。疏泄の機能は軽度維持。 |
| 肝陰虚 | 目の乾燥、ドライアイ、顔のほてり、潮熱、寝汗、のぼせ | 目が乾き、充血 | 不眠、焦燥感、易怒 | 四肢のだるさ・軽いしびれ | 舌紅、少苔、脈細数 | 血はあるが、陰液(潤い)が不足。虚火が生じやすい。 |
| 肝腎虚 | 聴力低下、腰膝酸軟、白髪、耳鳴り、疲労倦怠 | 視力低下、夜盲、耳鳴り | 易疲労、集中力低下 | 腰膝酸軟、下肢冷感 | 舌淡紅または紅、脈細弱 | 肝血虚+腎精不足。慢性・加齢性疾患に多い。 |
■ ポイント解説
1.肝血虚
- 主に血の不足による栄養低下型。
- 目のかすみ・夜盲・爪の乾燥・こむら返りが代表症状。
- 精神症状は軽度。
2.肝陰虚
- 血はあるが潤い(陰)が不足。
- 虚火上炎の症状(ほてり・潮熱・口渇)が出る。
- ドライアイ・不眠・焦燥感が特徴。
3.肝腎虚
- 肝血虚に腎精不足が加わった状態。
- 老化・慢性疾患に多く、目・耳・腰膝の症状が同時に出る。
- 精神症状は倦怠・集中力低下型。
■ 臨床での鑑別のコツ
1.目の症状
- 夜盲・かすみ → 肝血虚
- 乾燥・充血 → 肝陰虚
- 夜盲+耳鳴り → 肝腎虚
2.精神症状
- 軽度神経過敏 → 肝血虚
- 不眠・焦燥感 → 肝陰虚
- 倦怠・集中力低下 → 肝腎虚
3.四肢・筋症状
- こむら返り・しびれ → 肝血虚
- 軽いしびれ・だるさ → 肝陰虚
- 腰膝酸軟・下肢冷感 → 肝腎虚
舌脈
- 舌淡細・脈細 → 肝血虚
- 舌紅少苔・脈細数 → 肝陰虚
- 舌淡紅・脈細弱 → 肝腎虚
- 肝血虚→肝陰虚→肝腎虚 は病態が進行する場合もあります。。
処方の選択はこの鑑別に基づきます
肝血虚には四物湯+枸杞子
肝陰虚には杞菊地黄丸=六味地黄丸+枸杞子+菊花
肝腎虚には六味地黄丸+枸杞子+海馬系。
まとめ
肝血虚・肝陰虚・肝腎虚は
互いに連続性を持ちながらも症状の現れ方に違いがあります。
鑑別を正しく行うことで
体質や病態に合った漢方薬を選び
より効果的な治療につなげることができます。
「目」「精神」「四肢」「舌脈」といった手がかりを総合して判断し
病状の進行の可能性も念頭に置きながら
柔軟に対応することが重要と考えております。
鑑別は単なる分類ではなく
一人ひとりに寄り添うための道しるべとなるのです。


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