不眠症は中医学において、「心神不安」「陰陽失調」などが原因
診断は
五臓(心・肝・脾・肺・腎)
五志(怒・喜・思・憂・恐)
六淫(風・寒・暑・湿・燥・火)
七情(喜・怒・憂・思・悲・恐・驚)
陰虚・陽虚、痰飲・瘀血 などを考慮して行います。
代表的な証、不眠の悪化条件と問診のポイントを解説します。
目次
1. 心脾両虚(しんぴりょうきょ)
症状
- 入眠困難、中途覚醒
- 夢が多い、健忘、動悸
- 倦怠感、顔色が悪い、食欲不振
不眠の悪化条件
- 疲労、精神的ストレス、長時間の思考
(脾気がさらに虚すると、血を生み出せず、脳が栄養不足になる)
問診のポイント
- 夢をよく見るか?(心血不足)
- 物忘れが多いか?(心血不足)
- 消化不良や軟便があるか?(脾気虚)
2. 心腎不交(しんじんふこう)
症状
- 入眠困難、寝汗、口乾
- 腰膝のだるさ、耳鳴り
- 手足のほてり、動悸
不眠の悪化条件
- 寝不足、過労、夜更かし(腎陰が枯渇)
- 辛いものの過剰摂取(虚火が旺盛に)
問診のポイント
- ほてりを感じるか?(陰虚)
- 夜間に汗をかくか?(陰虚)
- 腰膝がだるいか?(腎虚)
3. 肝火擾心(かんかじょうしん)
症状
- 怒りっぽく、夢が多い
- 頭痛、目の充血、耳鳴り
- 口が苦い、口渇、便秘
不眠の悪化条件
- 怒りやストレス(肝火が上昇)
- アルコール、脂っこい食事(肝胆の熱が増える)
問診のポイント
- 怒りっぽいか?(肝火亢進)
- 目が充血するか?(肝火)
- 口が苦く感じるか?(胆火)
4. 痰熱内擾(たんねつないじょう)
症状
- 不安感、胸苦しさ、悪夢
- 眠りが浅く、多夢
- 口の粘つき、頭が重い
不眠の悪化条件
- 甘いもの、脂っこい食事(痰湿が増える)
- ストレス(気滞が生じ、痰が詰まる)
問診のポイント
- 胸苦しさがあるか?(痰熱)
- 頭が重いか?(痰湿)
- 口の粘つきや苦みは?(痰熱)
5. 瘀血阻滞(おけつそたい)
症状
- 不眠、頭痛、刺すような痛み
- 顔色が暗く、シミが多い
- 手足の冷え
不眠の悪化条件
- 寒さ(血流が滞る)
- 長時間同じ姿勢(血行不良)
問診のポイント
- 頭痛は刺すようか?(瘀血)
- 皮膚にシミが多いか?(瘀血)
- 手足が冷えるか?(血流不足)
☆まとめ
不眠症の治療は 「心神安定」「陰陽調和」「気血津液の調整」 を基本に行います。
適切な証を見極め、問診で 悪化因子・体質・生活習慣 を確認し、最適な処方を選ぶことが重要です。
6. 肝鬱血虚(かんうつけっきょ)の不眠
症状
- 入眠困難・夢が多い・眠りが浅い
- イライラしやすい、ため息が多い、抑うつ気分
- めまい、目の乾燥、視力低下
- 筋肉のこわばり、生理不順(女性)
- 顔色がくすむ、爪が割れやすい
病理
- 「肝鬱」(ストレスや感情の抑圧)により 気の流れが停滞 → 血の生成や巡りが悪くなる
- 「血虚」(血が不足)により 心神が栄養不足 → 神(精神)が安定せず不眠になる
- 肝鬱と血虚の影響で、めまいや目の疲れ、筋肉のこわばりが起こる
不眠の悪化条件
- ストレス・精神的緊張(肝気がさらに滞る)
- 過労・睡眠不足(血が消耗し、肝血不足が悪化)
- 目の酷使(スマホ・PC作業)(肝血を消耗し、めまいを引き起こす)
- 寒冷・冷たい食事(脾胃を弱らせ、気血の生成が低下)
問診のポイント
✅ 精神状態の確認
- イライラしやすいか?(肝鬱)
- ため息が多いか?(気滞)
- 落ち込みやすいか?(血虚)
✅ 身体症状の確認
- 目の疲れ・乾燥があるか?(肝血虚)
- 筋肉がこわばりやすいか?(血虚+気滞)
- 爪が割れやすい、白くなっていないか?(血虚)
✅ 女性の場合、生理の状態を確認
- 生理不順があるか?(血虚+肝鬱)
- 生理前にイライラが強まるか?(肝気鬱結)
★まとめ
「ストレスが多く、気が巡らず、血も不足することで心神が安定せず、不眠になる」 のが 肝鬱血虚 の特徴です。
適切な処方を用いて 気の巡りを良くし、血を補い、精神を安定させる ことで不眠を改善します。
コメント