夜尿症の中医学的分類
夜尿症(遺尿)は、中医学では主に以下のパターンに分類
- 腎気不足(腎陽虚) → 温補腎陽(腎を温める)
- 脾肺気虚 → 補気健脾(脾を補う)
- 肝気旺盛(肝火犯脾・肝脾不和) → 疏肝理気(肝の気を整える)
- 痰湿内阻 → 化痰利湿(痰湿を取り除く)
「肝気旺盛(肝火犯脾・肝脾不和)」と「痰湿内阻」に対して、抑肝散+半夏陳皮。
目次
抑肝散の作用と夜尿症への適用
① 抑肝散の構成生薬
- 釣藤鈎(ちょうとうこう) … 鎮静、抗痙攣、肝気の抑制
- 当帰(とうき) … 補血、血流促進
- 川芎(せんきゅう) … 活血、血行促進
- 白朮(びゃくじゅつ) … 健脾、利水
- 茯苓(ぶくりょう) … 健脾、利水、鎮静
- 甘草(かんぞう) … 緩和、調和
② 抑肝散の主な作用
- 肝の過剰な興奮を抑える(平肝熄風)
- 脾胃の機能を補う(健脾安神)
- 神経の興奮を鎮める(鎮静作用)
夜尿症と抑肝散の関連
- 子供の場合は、肝の疏泄:流れが過剰になり、脾胃を傷つけることで起こる
- 神経過敏、ストレス、怒りっぽい、イライラする子供の夜尿症は「肝火旺盛」
- 抑肝散は「肝気を整え、神経の興奮を抑える」ため、夜尿症改善に有効。
半夏陳皮(理気+化痰)の作用
① 半夏と陳皮の働き
- 半夏(はんげ) … 痰湿を除去し、気の流れを改善
- 陳皮(ちんぴ) … 脾胃を調え、気の巡りを良くする
② 夜尿症と半夏陳皮の関係
- 脾胃が弱く、痰湿が溜まりやすいタイプの夜尿症に適応
- 子供の夜尿症は「脾虚」によるものが多く、痰湿が関与するケースも多い
- 半夏陳皮を加えることで、脾胃を強化し、水分代謝を改善する
抑肝散+半夏陳皮の組み合わせの意義
- 抑肝散 … 肝気を整え、神経の興奮を鎮める
- 半夏陳皮 … 胃腸の機能を助け、痰湿を除く
肝気が高ぶりやすく、ストレスや神経過敏による夜尿症に最適
まとめ
- 抑肝散は、夜尿症のうち「肝火旺盛タイプ(ストレス、神経過敏)」に有効
- 半夏陳皮を加えることで「脾胃を強化し、痰湿を除去」し、効果を高める
- ストレス+脾虚が関与する夜尿症に、抑肝散+半夏陳皮
問診のポイント
1幼稚園に行き始めたら夜尿症
2小学校へ行き始めたら夜尿症
3下の子供が出来たら夜尿症 等々確認
夜尿症以外にも「興奮しやすい子供の夜泣き、イライラしやすい子供の体質改善」にも応用
夜尿症の中医学的分類と治療
夜尿症は、中医学では主に腎・脾・肺・心の機能低下、肝の疏泄過剰(上記・抑肝散)
気血の失調によって起こる
問診:五臓のバランス、六淫・七情などの影響も考慮
1. 腎陽虚型(腎の陽気不足による夜尿)
病理
腎は膀胱の開閉を司るが、腎陽が不足すると膀胱の機能が低下し、尿を十分にコントロールできなくなる。
主な症状
- 夜尿が多い、尿が薄い
- 冷え性、四肢が冷たい
- 朝起きるのが苦手、顔色が青白い
- 足腰のだるさ、疲れやすい
悪化条件
- 冷たいものを食べると悪化
- 冷えや寒い環境で悪化
問診のポイント
- 体の冷え、特に足腰の冷えがあるか
- 尿の色、頻度
脾肺気虚型(脾と肺の気不足による夜尿)
病理
脾は水分代謝を司り、肺は気を全身に巡らせる。 脾気・肺気が不足すると、膀胱の気も弱まり、尿を保持する力が低下する。
主な症状
- 夜尿の頻度が高く、尿の量が多い
- 食欲不振、軟便、胃もたれ
- 風邪をひきやすい、体力が低い
- 顔色が白く、元気がない
悪化条件
- 疲れやすいと悪化
- 風邪をひくと夜尿が増える
問診のポイント
- 食欲、消化機能の状態
- 風邪をひきやすいか
心腎不交型(心と腎のバランス失調による夜尿)
病理
中医学では「心腎相交(心と腎のバランス)」が重要とされる。心火が強すぎると腎水を消耗し、膀胱のコントロールが乱れる。
主な症状
- 夢をよく見る、不眠気味
- 夜尿が突然起こる、尿の量が多い
- 動悸、不安感、集中力の低下
- 口の渇き、のぼせ
悪化条件
- ストレスが多いと悪化
- 睡眠不足で悪化
問診のポイント
- 夢をよく見るか、不眠の有無
- 動悸や不安感があるか
肝鬱気滞型(ストレスによる夜尿)
病理
ストレスや情緒の乱れが肝の気を停滞させ、膀胱の収縮調整が乱れる。
主な症状
- ストレスが多いと夜尿が増える
- 怒りっぽい、イライラしやすい
- ため息をよくつく、胸がつかえる感じ
- 女性は月経前に悪化することが多い
悪化条件
- 精神的なストレス、緊張
- 怒りや不安が続く
問診のポイント
- 最近ストレスが多いか
- イライラしやすいか
夜尿症の中医学的分類
型 | 主な原因 |
腎陽虚型 | 腎の陽気不足で膀胱の機能低下 |
脾肺気虚型 | 脾肺の気不足で尿を保持できない |
心腎不交型 | 心腎のバランス失調で尿が増える |
肝鬱気滞型 | ストレスや緊張で膀胱が過剰に収縮 |
問診で体質を見極め、適切な漢方を選ぶことで
膀胱のコントロールを改善し、症状を軽減
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