これらの生薬は、疼痛(痛み)の緩和に広く使われています。
それぞれ中医学的な作用と西洋医学的な薬理作用を持ち、使用法も異なります。
中医・西洋医学の視点からこれら生薬の痛みに対する作用の違いを見ていきましょう。
目次
各生薬の疼痛作用(中医学 & 西洋医学)
生薬 | 中医学的作用 | 西洋医学的作用 |
当帰 | 活血補血・行気止痛 | 抗酸化作用・抗炎症・血管拡張(NO増加) エストロゲン様作用 |
芍薬 | 養血柔肝・平肝止痛 緩急止痛 | 抗炎症作用(ロガニン、ペオニフロリン) 鎮痙作用 |
延胡索 | 活血行気・止痛 (特に気滞血瘀の痛み) | アルカロイドによる鎮痛作用(モルフィン様作用) ドーパミン受容体調節 |
三七 | 活血化瘀・消腫止痛 補気生血 | 抗炎症・抗酸化作用・血流改善(NO産生促進) |
それぞれの疼痛作用の詳細
① 当帰(Angelica sinensis)
中医学的作用
- 補血活血:血虚による痛みを改善(例:生理痛、冷えによる関節痛)
- 行気止痛:血流を促し、瘀血を改善
西洋医学的作用
- 抗酸化作用・抗炎症作用:フェルラ酸がプロスタグランジン(PG)を抑制
- 血管拡張作用(NO産生促進):血流改善による疼痛緩和
- エストロゲン様作用:ホルモンバランスの調整
使い方
- 生理痛・関節痛・冷えによる痛みに有効
- 血虚・瘀血による痛みに適す
- 婦人科系の痛み(桂枝茯苓丸・当帰芍薬散などに配合)
② 芍薬(Paeonia lactiflora)
中医学的作用
- 養血柔肝:肝血不足による筋肉の攣縮を和らげる
- 緩急止痛:筋肉のけいれん・緊張を和らげる(芍薬甘草湯の主成分)
- 平肝止痛:肝陽上亢による頭痛・めまいに有効
西洋医学的作用
- 抗炎症作用:ペオニフロリンがCOX-2を抑制
- 鎮痙作用:ロガニンが平滑筋の収縮を抑える
- 免疫調整作用:炎症性サイトカインの調整
使い方
- 筋肉痛・生理痛・胃腸の痙攣痛に有効
- 芍薬甘草湯(急性の筋痙攣)・当帰芍薬散(婦人科系) に配合
- ストレス性の痛み(胃痛・緊張性頭痛) に適す
③ 延胡索(Corydalis yanhusuo)
中医学的作用
- 活血行気・止痛:気滞血瘀による痛み(特に胸腹部の痛み)
- **「中薬のモルヒネ」**と呼ばれ、強い鎮痛作用を持つ
- 理気作用があり、ストレス性の痛みにも有効
西洋医学的作用
- 鎮痛作用(モルフィン様):延胡索のアルカロイド(コリダリン)がオピオイド受容体を活性化
- ドーパミンD2受容体抑制:ストレスによる痛みを軽減
- 抗炎症作用:COX-2抑制
使い方
- 月経痛・頭痛・胃痛・神経痛に適応
- 痛みに即効性があるため、頓服的に使用することも可能
- 冷えによる痛み(瘀血性生理痛) に特に適す
④ 三七(Panax notoginseng)
中医学的作用
- 活血化瘀・消腫止痛:血流を良くし、内出血・打撲・瘀血を改善
- 補気生血:貧血や血虚にも対応
西洋医学的作用
- 抗炎症・抗酸化作用:サポニンがフリーラジカルを除去
- 血流改善作用:NO産生促進、血小板凝集抑制
- 創傷治癒促進:損傷部位の血流を増やす
使い方
- 打撲・捻挫・外傷・術後の痛みに使用(内服・外用)
- 三七人参単体ではなく、他の活血化瘀薬と併用されることが多い
- 桂枝茯苓丸・血府逐瘀湯に加えて使うと効果的
3. それぞれの使い方の違い
生薬 | 適応する痛み | 即効性 | 体質の適応 | 主な配合処方 |
当帰 | 血虚・瘀血の痛み (生理痛・関節痛) | 中程度 | 血虚・冷え性 | 当帰芍薬散・桂枝茯苓丸 |
芍薬 | 筋痙攣・胃痛 ストレス性の痛み | 速効性あり | 肝血不足 ストレス体質 | 芍薬甘草湯・当帰芍薬散 |
延胡索 | 強い痛み (頭痛・月経痛・胃痛) | 即効性が高い | 気滞血瘀 ストレス性の痛み | 安中散・折衝飲 |
三七 | 打撲・捻挫 術後の痛み | 中程度 | 瘀血体質・血流不良 | 片仔廣 |
4. まとめ
当帰 血流改善・冷えによる痛みに有効
芍薬 筋肉痛・緊張性頭痛・ストレス性胃痛に適す
延胡索 強力な鎮痛作用(モルフィン様)、即効性あり
三七 打撲・術後の痛みに適し、血流改善効果が高い
芍薬は虚の場合は白芍薬 虚=血虚による痛み シクシク
芍薬は実の場合は赤芍薬 実=瘀血による痛み 刺痛・固定痛・夜間悪化
それぞれの生薬の特徴を活かし
適切に組み合わせることで、より効果的に疼痛を改善しましょう。
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