1.エストロゲン分泌と思春期
思春期とは8~9歳から17~18歳の期間であり、乳房発育に始まり、
恥毛の発現、身長の伸び、皮下脂肪の蓄積、初経が順次起こり、月経周期がほぼ順調にみられます。
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※中医学の考えでは女性は“7”の倍数で変化し、男性は”8”の倍数で変化します※
たとえば女性の場合、14歳で初潮を迎え28歳で心身のピークに達し、49歳で閉経を迎える…
このような流れです。
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なお、早発思春期とは乳房発育が7歳未満、陰毛発生が9歳未満、初経が10歳未満(早発月経)
でみられるものを指します。
生まれつき卵巣が機能していない女性では、思春期がみられず、エストロゲンを補充すると思春期に特徴的な
心身の変化がみられることから、思春期女児の心身の変化は、エストロゲンのよるところが大きいのは明白です。
ただし、外陰部や腋窩の発毛は副腎由来の男性ホルモンの作用であります。
思春期にはエストロゲン分泌は急速に高まるが、思春期が開始する以前から血中エストロゲン濃度は少しずつ
上昇しています。
2.世界的に思春期の開始が早まっている可能性がある
思春期が異常に早い場合を早発思春期と呼びますが、その原因として性機能の調節を司る
性中枢の炎症、外傷、腫瘍などがあります。
また、エストロゲンを産生する卵巣や副腎の腫瘍などが原因となりえるが、
原因不明なものもかなりあります。
近年、多くの先進国では思春期の開始が低齢化しているといわれています。
最近のアメリカの調査結果によると、乳房の発育が開始する平均年齢は白人では約10歳、
アフリカ系アメリカ人では8.9歳となっています。
つまり日本の小学生3~4学年に相当します。
また、早発思春期に該当する7歳までに乳房の発育がみられる女児の割合は、
白人10%、アフリカ系アメリカ人23%、ヒスパニック系15%、アジア系2%でありました。
特筆すべきこととして早期に乳房の発育をみる少女のほとんどは明らかな疾患によるもの
ではないかということであります。
☑懸念されること
食べ物を通じて環境中に存在するエストロゲン様作用を有する物質(内分泌かく乱物、
あるいは環境ホルモンと呼ばれる)を摂取しているのではないかということです。
さらに思春期の低齢化には、文明が生み出した人工的生活環境も環境していると思われます。
例えば、都市に生息する島は生殖機能の獲得が早まることが知られていて、メラトニン分泌が低下しています。
夜間に人工的照明にさらされているヒトでもメラトニン分泌が低下して、思春期が早期に発現してしまう
可能性もあり得ます。
3.女児の肥満は思春期を早める
これまでは、女児が一定の体重になると思春期が開始すると考えられていました。
しかし最近の専門家の見解では、たとえ5歳、6歳で体重は軽くても相対的に脂肪組織が多いと、
思春期の過程が早期に進行してしまうといいます。
またアメリカの調査結果では開発途上国などの女児を養子にして、脂肪が豊富な食事を与えると
早期に思春期を迎えてしまうことが多いといいます。
☑なぜ?
肥満が思春期をなぜはやめるのかというと、脂肪組織から分泌され
食欲を抑えるレプチンというホルモンが、脳の性中枢に作用して
卵巣を刺激するホルモンを分泌させる結果、卵巣からのエストロゲン分泌が増加
されるからであります。
また一方で、レプチンはインスリンに対する組織の感受性を低下させるので、
血中のインスリンが増えてしまいインスリン濃度が高まると、さらに
脂肪組織が増加するという悪循環が形成されます。
4.思春期が早まることによる問題点
本来思春期とは、社会的な常識や生きる上で必要な知識の獲得とともに、
身体的成熟が並行して進行します。
しかし身体的成熟と精神的な成熟が乖離していると、当人や周囲も戸惑うこととなり
精神的にも不安定な状態になり、社会適応にも支障をきたすことがあります。
しかもその状態は、エストロゲンが分泌されるため、骨の成長が早期にとまり
低身長の原因になります。
さらに性犯罪に巻き込まれるおそれもあります。
また身体の早熟化により人工妊娠中絶を経験する頻度が高まり、
性感染症などのリスクも増します。
それ以外のも女児の早熟傾向はさまざまな問題が絡んでおり、例えば初経が早いほど
乳がんの発生が高まるといわれ、また早発思春期はうつ状態や摂食異常との関連も
指摘されています。
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