1.閉経が早まる要因
閉経の年齢は、洋の東西を問わず昔からあまり変動していません。
閉経年齢は人種差や個人差があり、遺伝的要因も関係しています。
戦時中には、閉経が早まっているというデータもあり、生活環境や栄養状態が
影響している可能性もあります。
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中医学では閉経が早まるのは、
『腎精の不足』『肝血不足』『脾気虚』『ストレスによる気の乱れ』
などが原因だと考えます。
食養生や生活習慣を意識して、
『腎を養い、血と気のめぐりをよくして、なるべくストレスや冷えを遠ざける』
ことで閉経のスピードを自然に緩やかにすることができます。
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☑閉経と喫煙の関係
喫煙は閉経を早めることが明らかになっています。タバコの量が多いほど
影響は大きいです。毎日20本以上の喫煙は1~4年間閉経を早めます。
喫煙が閉経を早める機序のひとつとして、タバコに含まれるDMBAという物質が
卵細胞を障害することで、閉経を早めるのではないか、といわれています。
喫煙はそれ自体血管の老化をもたらしますが、さらに閉経を早めることで
動脈硬化のリスクを一層高めることになります。喫煙女性でも喫煙期間が長いほど
卵巣への影響が大きいので閉経前のできるだけ早い時期に禁煙することが望ましいです。
また、子宮内膜症に対する卵巣の手術、卵管不妊手術なども閉経を早めることがあります。
おそらく卵巣自体、あるいは卵巣への血流が障害を受けることによると考えられます。
2.両側の卵巣を摘出したその後
☑その後の健康に影響するか
閉経前に両側の卵巣を摘出すると、エストロゲンのレベルは急激に低下し、
ほとんど検出できない程度になります。ただし片側の卵巣が残っていれば
両側の卵巣がある女性と同程度のエストロゲン値は保たれます。
閉経前の女性、特に40代前半に両側の卵巣を摘除すると、狭心症、心筋梗塞、
脳卒中などの心血管系疾患が多くなります。
これらの疾患は本来、閉経後増加しますが、エストロゲン作用の欠落のために
動脈硬化の発症が早まった結果と考えられます。
また、骨粗鬆症にかかりやすく大腿骨の骨折(特に大腿骨頸部)のリスクが高まります。
さらに認知障害も増加するという報告もあります。
一方、閉経後の女性から両側の卵巣を摘除しても、もともと月経がなくエストロゲンレベルも
低いので影響がないと思われがちです。
しかし、閉経後5年程度は低地ではあっても、ある程度のエストロゲンは血中に
存在しているため、この場合の女性は自然に閉経を迎えた女性よりも
エストロゲンはより低くなる。
このため、心血管系の疾患や骨粗鬆症のリスクが高まる可能性はあります。
なお、両側卵巣摘除により予想される健康被害は、エストロゲンの投与で
理論的には予防することができます。
閉経後の卵巣から直接分泌されるエストロゲンはごく微量です。しかし、
閉経後でも閉経前の2/3ぐらいの男性ホルモンが分泌されています。
それが脂肪組織などでエストロゲンに転換されることで閉経後しばらくは、
血中のエストロゲンは若干残存しています。
3.男性にも更年期があるのか
男性は、女性の閉経のように急にテストステロンが低下する時期はありません。
テストステロン値は20代にピークとなり、その後年齢とともに緩徐ではありますが
次第に低下します。男性でも年齢不相応にテストステロンが低下すると、女性の更年期と
似た症状がみられることがあります。
例えば、疲労感、抑うつ傾向、発汗、イライラ、睡眠障害、性欲減退などの症状があります。
最近、このような症状で生活に支障をきたすような男性を“加齢男性性腺機能低下症候群”
と診断し、積極的に男性ホルモンを投与すべきであるという見解が専門学会から提唱されています。
俗にいう男性更年期ということになります。この場合は、40歳以上でテストステロン値が
低下していることが前提で、上記の症状以外に筋力低下や内臓脂肪の増加を伴っています。
なおうつ病などの精神疾患は除外します。
男性更年期の診断が下されるのは主に、40~60代であり、女性の更年期のように
特定の時期に限定されてはいません。また、女性の更年期障害のように性腺機能の低下と、
それに起因するホットフラッシュなどの症状との関係が必ずしも明確ではありません。
したがって、加齢男性性腺機能低下症候群に対する男性ホルモンの補充の効果は
多少個人差があります。なお、男性におけるテストステロンの低下も、
閉経後の女性にみられるように血管の老化に関係し、心臓病や脳卒中などのリスクが上昇するといわれています。
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