寒風束表(かんぷうそくひょう)とは、寒邪(かんじゃ)と風邪(ふうじゃ)が体表を侵し、
肺の宣発(せんぱつ)・粛降(しゅくこう)機能を阻害する状態を指します。
肺の機能が阻害されることで、咳・鼻水・悪寒・発熱などの風寒感冒の症状が現れます。
目次
1.主な病理変化
- 寒邪が体表を閉塞し、衛気(えき)の運行が阻害される → 寒気・発熱・頭痛
- 寒邪が肺を束縛し、宣発・粛降が失調する → 咳・痰・息苦しさ
- 肺気が上逆し、津液の分布が滞る → 鼻水・くしゃみ・喉の違和感
2. 病因(発生要因)
1. 外邪の侵襲
- 寒冷な環境での曝露(冬の屋外、クーラーの強い部屋)
- 風に当たり続ける(強風の日の外出、窓を開けたままの就寝)
- 雨や雪で体が冷える
2. 体表の防衛機能(衛気)が弱い
- 体質的に気虚(特に肺気虚)の人
- 長期間の過労や栄養不足による免疫低下
3.環境の影響
- 季節の変わり目(秋から冬、冬から春)
- 気温の急激な低下
3. 病理メカニズム
1.寒邪が体表を閉塞し、衛気の運行が滞る
- 発熱・悪寒・頭痛・倦怠感が発生
- 発汗が抑制され、寒気が強くなる
2.寒邪が肺に侵入し、肺の宣発・粛降機能が低下
- 咳・痰・鼻水・息苦しさが発生
3.肺気の上逆と津液の停滞
- 乾いた咳、または白く粘る痰
- 鼻水・くしゃみ
4.寒邪により気血の巡りが悪化
- 四肢の冷え、筋肉のこわばり、関節痛
4. 影響を受ける臓腑と症状
1.肺(宣発・粛降の失調)
- 咳嗽(せき)、鼻水、くしゃみ、息苦しさ
2.体表(衛気の阻害)
- 発熱・悪寒、無汗(汗をかきにくい)
3.津液の停滞
- 白く粘る痰、鼻水が多い
4.血流の停滞(瘀血傾向)
- 筋肉のこわばり、関節の冷え・痛み
5. 主な症状
- 発熱・悪寒(悪寒が強く、発熱は軽度)
- 無汗(発汗が少ない)
- 咳嗽(せき)、痰(白色で粘る)
- 鼻水(透明で多い)、くしゃみ
- 頭痛、倦怠感
- 舌診:舌は淡紅、舌苔は薄白
- 脈診:浮緊脈(ふきんみゃく、風寒の特徴)
6. 悪化条件
- 寒冷環境にさらされる(寒さ・風)
- 冷たい飲食(生もの、冷たい飲料)
- 発汗を抑える行動(厚着しすぎる、風呂に入らない)
- 疲労やストレス(衛気が弱る)
7. 問診ポイント
- 悪寒と発熱のバランス(寒気が強く、発熱が軽いか?)
- 発汗の有無(汗をかかないか?)
- 咳・痰の状態(乾いた咳か?痰は白く粘るか?)
- 鼻水・くしゃみの有無
- 筋肉のこわばりや関節痛
- 舌の状態(舌苔が白いか?)
- 脈の状態(浮いていて緊張感があるか?)
★まとめ
寒風束表による肺失宣粛は、風寒の邪が肺の機能を阻害し、咳・鼻水・悪寒などを引き起こします。
治療には「辛温解表」を基本とし、適切な生薬を使い分けることが大切です。
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