過活動膀胱(OAB)は
尿が十分に溜まっていないにもかかわらず
膀胱が勝手に収縮してしまうことで
強い尿意や頻尿、切迫性尿失禁を引き起こす症状です。
この現象は、
西洋医学では「自律神経の過活動」や「中枢の抑制低下」として説明されますが
中医学では「腎気不固」「肝気鬱結」「膀胱湿熱」などの病機と対応づけられます。
過活動膀胱のメカニズムを西洋医学と中医学の両面から捉え
両者の接続を意識しながら理解を深めていきます。
過活動膀胱(OAB)と自律神経・中枢の関係を
西洋医学と中医学との接続を意識しながらお話し致します。
1. 正常な排尿サイクルと自律神経の役割
排尿は 脳(中枢)-脊髄-膀胱(末梢) が連動する高度な反射です。
ポイントは排尿のきっかけは反射と言う事です。
■ 膀胱の役割
| 状態 | 自律神経 | 働き |
| 尿をためる (蓄尿期) | 交感神経(下腹神経:T11〜L2) | 膀胱排尿筋→ 弛緩内尿道括約筋→ 収縮 |
| 尿を出す (排尿期) | 副交感神経(骨盤神経:S2〜S4) | 膀胱排尿筋 →収縮内尿道括約筋 → 弛緩 |
2. 過活動膀胱(OAB)とは?
「膀胱がまだ尿が十分溜まっていないのに、勝手に収縮しようとする状態」
■ポイント
- 尿が十分溜って反射するところ
尿が溜まってないのに反射が起こってしまう。
→ その結果、
- 急に我慢できない尿意(尿意切迫感)
- 頻尿
- 切迫性尿失禁が起こります。
3. OABの核心:どこで“排尿のスイッチ”
■“排尿の反射”が起こるのか?
“中枢の抑制が弱くなって、膀胱反射が勝手に発火する”ことが本質です。
以下の3つに分けて説明します。↓
① 【末梢】膀胱側の過敏(求心性過活動)
膀胱の壁には 「伸展を感知するセンサー(C線維・Aδ線維)」 があり、
尿が溜まると脳へ信号を送ります。
- 粘膜の炎症
- 加齢による神経の変性
- 膀胱の虚血
- 糖尿病性ニューロパチー
などがあると センサーが過敏 になり、
「まだ200mLしか溜まっていないのに、いっぱいだと誤認」
→ 異常信号が脊髄へ
→ 脊髄反射で副交感神経(骨盤神経)が興奮
→ 勝手に排尿筋が収縮(=OAB)
② 【中枢】脳の抑制が弱くなる(上位中枢の制御低下)
正常では、膀胱が少し膨らんでも脳が抑制します。
- 前頭前野(行動の抑制、我慢の中枢)
- 橋排尿中枢(PAG → PMC)
- 視床
これらが「まだ排尿するな」と制御しています。
ところが…
- ストレス
- 加齢
- 脳の萎縮(軽度認知症を含む)
- 脳血管障害の後遺症
- 自律神経失調
などにより 抑制回路が弱くなる と
「わずかな膀胱刺激でも排尿反射がON」
になります。
この状態を 抑制障害性OAB と呼びます。
③ 【脊髄】脊髄レベルで反射が暴走する
特に加齢で多いのが
- 仙髄S2–S4の反射亢進(骨盤神経反射の過敏化)
膀胱からの求心性信号が過大になると
脊髄が直接 副交感神経を刺激 → 排尿筋が収縮。
「中枢の抑制」と「末梢の興奮」のバランスが崩れて起こる現象です。
❗結論
- 膀胱側の異常興奮(センサーの過敏)
- 脳の抑制低下(前頭前野・橋の制御緩み)
- 脊髄反射の亢進
これらにより 副交感神経が“入りやすい身体状態になる”
ということが過活動膀胱の本質です。
過活動膀胱を中医学と対応づける
中医学でOABに対応する病機は:
- 腎気不固(腎虚) → 括約筋の弱さ
- 脾気虚 → 水分代謝低下・膀胱の統摂不足
- 肝気鬱結/肝風内動 → 自律神経過敏・突然の尿意
- 膀胱湿熱 → 粘膜炎症による求心性過敏化
- 腎陽虚の冷え → 仙髄反射の過敏化と近い概念
特に
肝気鬱血 → 自律神経の抑制が効かない
という視点は、上位中枢の抑制障害と近いです。
まとめると
①膀胱の過敏化
②中枢の抑制低下
③脊髄反射の亢進の組み合わせ。
これらが合わさり、
正常より早い段階で排尿反射
副交感神経を誘発してしまうのが過活動膀胱
過活動膀胱の本質は
◎膀胱の過敏化
◎中枢の抑制低下
そして、『脊髄反射の亢進』という三位一体のバランス崩壊にあります。
西洋医学では
神経学的な反射制御の破綻として捉えられますが
中医学では
「腎の固摂作用の失調」
「肝気の抑制力の低下」
といった内因的な虚実の乱れとして捉えます。
西洋医学の神経生理学的知見に
中医学の臓腑・気血の概念を重ねることで
症状の背景にある“根本の失調”を捉えることが可能となり
より包括的な治療や予防につながります。
漢方的なアプローチを加えることで
単なる対症療法にとどまらず
体質改善や再発予防にも寄与できるのです。


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