重要な3つの感覚神経線維
痛みや触覚を感じる神経
「Aβ線維(エーベータせんい)」
「Aδ線維(エーデルタせんい)」
「C線維(シーせんい)」
「痛いの痛いの飛んでいけ」――
子どもに手を当てて優しく撫でると、なぜか痛みが和らぐ。
これは単なる気休めではなく、神経の働きと気血の流れが関係している現象でした。
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ここからは、Aβ線維・Aδ線維・C線維という神経の役割と、
それに対応する中医学の考え方を紐解いていきましょう。
皮膚や筋肉にある感覚受容器からの信号は
末梢神経を通って脊髄へ伝わります。
その際、「どの神経線維で伝わるか」によって
伝わる速さや感覚の種類が違います。
1. Aβ線維(読み方:エーベータせんい)
特徴
太い有髄線維(直径:6〜12μm)
伝導速度:35〜90 m/s(とても速い)
伝える感覚
触覚・圧覚・振動など
たとえば「撫でる」「触れる」「圧をかける」ときの感覚を伝える
役割
通常は「痛み」ではなく「触覚」を伝える線維ですが、
ゲートコントロール理論では重要な役割を持ちます。
Aβ線維が活発になると
脊髄で痛みを伝える神経(C線維・Aδ線維)を抑制する
優しく撫でると痛みが和らぐ理由がこれです
イメージ
「やさしい触れ方で、痛みの信号をブロックする神経」
2. Aδ線維(読み方:エーデルタせんい)
特徴
細い有髄線維(直径:2〜6μm)
伝導速度:12〜30 m/s(中くらいの速さ)
伝える感覚
鋭い・局所的な痛み(一次痛)
例:「針でチクッと刺されたとき」「熱いものに触れた瞬間の痛み」
役割
痛みの第一報を素早く伝える
逃避反射(熱いものから手を引くなど)を引き起こす
痛みセンサーからの信号を伝える
イメージ
「危険をすぐ知らせる、速達の痛み信号」
3. C線維(読み方:シーせんい)
特徴
細い無髄線維(直径:0.4〜1.2μm)
伝導速度:0.4〜2 m/s(非常に遅い)
伝える感覚
鈍い・持続的な痛み(二次痛)
- 例:「打撲後のジンジン痛い」「炎症性のズキズキした痛み」
温覚(ぬるい温度)やかゆみを伝える
役割
長く続く痛みや炎症反応を脳に伝える
また、痛みとともに情動(不快感・ストレス)にも関係する
イメージ
「あとからジワジワ来る、持続的な痛み信号」
まとめ表
| 線維名 | 有髄/無髄 | 主な感覚 | 痛みのタイプ | 備考 |
| Aβ線維 | 有髄(太い) | 触覚・圧覚・振動 | 痛み抑制 | 痛み抑制 |
| Aδ線維 | 有髄(細い) | 鋭い痛み・冷覚 | 一次痛 | すぐ感じる短い痛み |
| C線維 | 無髄 | 鈍い痛み・温覚・かゆみ | 二次痛 | 持続的で不快な痛み |
中医学との対応で見ると
| 西洋医学 | 中医学的対応 |
| Aβ線維 | 「経絡の通暢」→通じていれば痛みが止まる(通則不痛) |
| Aδ線維・C線維 | 「気血の阻滞」→痛み信号の滞り・瘀血・気滞 |
| ゲートコントロール | 「疏通経絡」「理気活血」=痛みの門を開閉する作用 |
Aβ線維の活性化による痛みの抑制は、
中医学で言えば「疏通経絡」「理気活血」「通則不痛」に通じます。
一方、C線維が関与する慢性的な痛みや痒みは、
「気血の阻滞」すなわち瘀血や気滞の改善が鍵となります。
次回は、こうした痛みのタイプに応じた具体的な漢方処方についてご紹介していきます。


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