陰とは
生命を潤し
静けさと安定をもたらす根源の力です。
陰虚とは
その陰が不足し
身体と心に乾きや熱をもたらす状態を指します。
「最近、なんだかほてりやすくて、喉も乾くんです」
そんな声の背景には
陰虚という体質の変化が隠れているかもしれません。
陰虚とは何か
どんなサインがあるのかを
わかりやすくまとめました。
陰虚とはつまり
陰分である血・津液・精の不足
血・津液・精
- 血 → 血液(栄養・潤い・精神安定)
- 津液 → 血液以外の正常な体液(唾液・涙・汗・粘液・リンパ液的なものを含む)
- 精 → 腎に蓄えられた生命エネルギー、先天の精+後天の精
しかし
血・津液・精は「独立した物質」ではなく“相互変換可能”な一つの陰分である
中医学では、血・津液・精はすべて 陰に属する体の“潤す資源”。
それぞれは別物のように見えて、相互に変換できます。
- 津液が濃縮されて血になる
- 血がさらに濃縮されて精になる
- 精が不足すれば血が消費される
つまり、
陰虚とは「血・津液・精という陰分のどれか一つの不足」ではなく、
陰という“潤すシステム全体”の不足
陰には“形(物質)”と“機能”がある
陰虚というと物質不足ばかりに意識が向きますが、陰には2側面があります。
| 陰の側面 | 内容 |
| 形の陰 | 血・津液・精という“物質” |
| 機能の陰 | 体を冷静・鎮静・潤滑・抑制する働き |
つまり陰虚には、
- 物質の陰が足りない(血・津液・精の不足)
- 働きの陰が弱い(鎮静・冷却・抑制が効かない → 相対的に熱が出る)
という2つの側面があると理解してください。
陰虚 ≠ ただの“枯れた状態”
陰虚には必ず 「虚熱」 が付いてきます。
理由:
- 陰(冷静・抑制・潤す)が不足すると、
- 相対的に陽(温・活性・上昇)が余り、
- のぼせ、ほてり、寝汗、乾燥、口渇、イライラが出る
つまり陰虚は
乾燥しながら熱を帯びる “乾燥+微熱” の病理
であり単なる“潤い不足”ではありません。
では陰虚とは何か?【中医学的な定義】
陰虚とは、
体を潤し、冷やし、抑える陰の物質(血・津液・精)と、
その機能が不足した状態
→ 相対的に陽が余り、虚熱が生じる。
陰虚で起こる症状
| 症状 | 病理 |
| 手足が熱い、寝汗、ほてり | 陰の冷却が足りず陽が暴れる(陰虚火旺) |
| 乾燥、皮膚や粘膜の潤い不足 | 津液不足 |
| めまい、動悸、不眠 | 血不足(心血虚)+虚熱 |
| 腰や膝がだるい、性機能低下 | 腎精不足 |
| 便秘 | 腸が潤わない |
| 咽喉の乾燥・空咳 | 肺陰虚 |
| スマホ疲れ・視力低下 | 肝血・肝陰不足 |
陰虚の評価:血・津液・精のどれが不足しているか
陰虚は臓腑別に特徴が出ます。
① 肺陰虚
乾燥性の咳、空咳、声がれ、乾燥しやすい皮膚
→ 津液不足
② 胃陰虚
胃の乾燥、口渇、空腹感はあるが食べられない
→ 津液+精微不足
③ 肝陰虚(肝血不足)
目が乾く、イライラ、筋肉のつり
→ 血+陰分不足
④ 腎陰虚(腎精不足)
ほてり、耳鳴り、めまい、腰のだるさ
→ 精の不足
⑤心陰虚
不眠・動悸・焦燥感・五心煩熱
→血+津液不足
陰虚の治療は「補陰」「滋陰」「養陰」で違う
| 名称 | 主なターゲット | 方意 |
| 補陰 | 長期的に精を補う(腎精) | 腎水を増やす、陰を育てる |
| 滋陰 | 津液・血など比較的軽い陰分の補充 | 乾燥を潤し、虚熱を冷ます |
| 養陰 | 血+津液を増やし機能を回復 | 機能回復・虚熱緩和 |
最終まとめ
陰虚=血・津液・精という陰分の“量の不足”+陰の“冷却・潤滑・抑制機能の低下”で、
その結果として相対的な虚熱が生じる病理。
- 血・津液・精は相互に変換する「陰分の一体系」である
- 陰虚=乾燥+虚熱
- 陰虚には臓腑別パターンがある(肺・肝・腎・胃など)
陰虚の理解は、身体の静なる側面への洞察を深めることでもあります。
症状の奥にある「潤いの不足」を見つめることで
より本質的なケアが可能になるでしょう。
陰が満ちれば
心も身体も静かに落ち着きます。
陰虚のサインは
そんな静けさが揺らいでいる合図。
その声に気づくことが、回復への第一歩です。


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