初経から閉経を迎えるまで、女性のライフスタイルに大きく関与するのが『女性ホルモン』。
女性ホルモンは、出産に向けた働きをサポートするだけでなく、
体つきや肌つや、髪の美しさなど、美容や健康にも大きく関係します。
月経の周期によってむくみや眠気を感じたり、イライラしたり、気分が良くなったり、
体だけでなく心にも変化をもたらしているのも、実はこのホルモンの影響があります。
年齢やライフステージによる分泌量の変化で、月経痛、PMS、子宮内膜症、子宮筋腫、更年期障害など、
トラブルや不調、疾患で悩みを抱える女性も少なくありません。
働く女性が増え、職場環境での女性のヘルスケアへの理解もますます重要度が増している昨今。
妊活に向けてでけでなく、思春期のお子様を持つご家庭、企業様にも、
きちんとその知識と理解を得ていただくことはとても大切です。
こちらの記事では、女性ホルモンの基本知識や仕組みを徹底解説していきたいと思います。
そもそも女性ホルモンって?
そもそも女性ホルモンとはどのようなものなのでしょうか?
まずはその種類や作用からご紹介します。
女性ホルモンの種類とその仕組み
女性ホルモンにはエストロゲン(卵胞ホルモン)、プロゲステロン(黄体ホルモン)があります。
どちらもコレステロールを原料にして作られています。
2種類の女性ホルモンは 、どちらも脳にある視床下部からの指令が卵巣に作用し、そこから分泌されています。
もう少し具体的にご説明すると、
視床下部から、GnRH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)が分泌
↓
その刺激を受けた脳下垂体から、FSH(卵胞刺激ホルモン)とLH(黄体化ホルモン)という
2種類の性腺刺激ホルモンが分泌
↓
性腺刺激ホルモンに刺激されて、
卵巣から卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)が分泌
という仕組みです。
卵巣からのホルモン分泌量は、減ってくると増えるように、増えれば減るように脳が指令を出して調整しているのですが、視床下部はストレスの影響を受けやすく、これが働かなくなると、ホルモンの分泌にも影響が出てしまいます。
妊活中に「あまりストレスがかからないように」と言われるのは
このような影響もあるからなんですね。
エストロゲン(卵胞ホルモン)とは?
エストロゲンは卵巣の中で成長している卵胞から作られます。
主に排卵までの卵胞で作られるため別名を卵胞ホルモンと言います。
エストロゲンは作られる場所が変わる?!
エストロゲンは閉経前と閉経後では主に作られる場所が変化します。
閉経前ではエストロゲンは卵巣で主に作られます。
原料であるコレステロールが卵胞の中でアンドロゲンとなり、エストロゲンに変換されます。
卵胞の一番外側にある莢膜細胞層でコレステロールがLHによってアンドロゲンとなり、
莢膜細胞層の内側にある顆粒膜細胞層でFSHによってアンドロゲンからエストロゲンが作られます。
エストロゲンの中でも卵胞で作られるエストロゲンのことをエストラジオール(E2)と言い、
エストロゲンの中でもほかの臓器に作用する力が最も強くなります。
一方、閉経後は脂肪細胞が主なエストロゲンの作成場所になります。
脂肪細胞の中にあるアロマターゼがアンドロステンジオンをエストロゲンへ変化させます。
閉経後に脂肪細胞で作られるエストロゲンはエストロン(E1)と言います。
エストロゲンの中にはエストリオール(E3)もあり、こちらは妊娠時に作られます。
胎児の副腎や胎盤で産生されます。母体の尿中に排泄されるので、
今より赤ちゃんや胎盤の機能を評価する検査に応用されます。
どこに作用するの?
(Ⅰ)乳房・子宮・膣への作用
エストロゲンは乳房・子宮・膣に作用しています。
乳房に関しては、乳管の発育に関与します。
子宮へは、子宮内膜のらせん動脈(内膜に栄養をあたえる)を増やすことにより内膜を増やしたり厚くするなどに作用します。
頸管粘液(おりもの)に関しては分泌量を増やし、性質をサラサラにし、糸のように伸びるような状態へと変化をさせます。
(Ⅱ)肝臓・血液・骨・皮膚への作用
ほかにも肝臓や血液・血管、骨や皮膚にも作用します。
肝臓においてはLDLコレステロールを下げ、HDLコレステロールを上昇させます。
エストロゲンが低下することによって(例えば閉経後)高脂血症である脂質異常症のリスクが高まります。
血液に対しては動脈硬化を抑えたり、血管に対しては広げる作用があります。
エストロゲン低下によって動脈硬化のリスクが高まります。
骨に関しては骨量の維持やコラーゲンの合成を促進します。
こちらもエストロゲン低下によって閉経後に多い骨粗鬆症のリスクが高まります。
皮膚に関しては皮脂腺の分泌抑制やコラーゲン合成の促進をします。
肌トラブルに多いニキビは皮脂腺からの皮脂の分泌が過剰に増えることが原因のひとつにあります。
ですので、エストロゲンが低下する生理前や生理中などにニキビができやすくなります。
またコラーゲンの合成が少なることはしわの原因にもなります。
プロゲステロン(黄体ホルモン)について
プロゲステロンは卵胞が排卵した後に変化した黄体から主に作られます。
黄体から作られるので黄体ホルモンとも言われます。
どこに作用するの?
プロゲステロンはエストロゲンと同じく乳房・子宮・膣に作用します。
子宮や膣に対してはエストロゲンと反対の作用、乳腺に対しては協力しあいながら作用しています。
乳腺(乳管と小葉)に対して発育を促進します。
子宮に対してはエストロゲンによって増殖した内膜を維持し安定させる方向に働きます。
排卵後もプロゲステロンによってらせん動脈を増やし、また子宮内膜腺からのグリコーゲン(ブドウ糖がたくさんくっついて出来ているので多糖とも言われます)を含んだ分泌物を出すことで着床に向けて内膜の質を変化させます。
また、妊娠時には胎児と羊水を包む薄い膜である卵膜の一部になるために、プロゲステロンによって内膜の機能層(月経によってはがれ出る部分)を脱落膜へと変化をさせます。
また、排卵後に基礎体温が上昇するのはこのプロゲステロンが出ていることによります。
女性ホルモンへの正しい理解を
女性ホルモンがどのように身体に影響しているかを理解することは、
妊活においても、私生活や女性の多い職場においても、とても大切になります。
ひとつのホルモンでいろいろな作用があり難しい部分もありますが、まずはそれを正しく理解することで、
女性への気持ちの負担が少しでも減ってくれたらと思います。
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