「ダイエットに向いている季節は何だと思いますか?」
ダイエットのご相談を頂いているお客様に尋ねると、ほぼ全ての方が「夏」と答えます。理由も皆様ほぼ同じで「暑くて汗かきやすいから、代謝がいいんじゃない?」というイメージ。
さて、それはホントでしょうか?
なぜ「夏が痩せやすい」と誤解されるのか
夏は暑いですね。特に最近の日本の夏は・・・
それゆえ、外にいれば自然と汗をかきます。そしてこの汗をかくという行為は、ダイエットにおいては「体重が落ちている」とイメージされる方も多いと思います。
そのため、
汗をかく⇒痩せる⇒夏は汗かきやすいから痩せやすい
そのようにイメージされる方が大変多いと思います。確かに痩せることとして考えれば、汗をかくことは悪いことではありません。
ただ、効率的にダイエットをするためにはあまり望ましくないことも起こるので、今回はもっと掘り下げて解説していきたいと思います。
気温の上昇とともに汗をかく理由
夏の気温上昇に伴い、体内温度が上がると、熱に弱い脳や身体の組織がそのままでは持ちません。
そこで体温調節を担っている脳の「視床下部」が、体内温度上昇をキャッチすると脳や身体の組織を守るため、汗腺に「汗を出して身体を冷やして!」と命令します。
運動をしなくても夏に汗をかくのは、温度上昇から身体の組織を守るため、「脳からの命令」により汗をかくのであって、代謝が上がって汗をかいた訳ではないのです。
ここで勘違いをして欲しくないのはこのかき方の汗というのは「運動して汗をかいたのとは別物」ということです。汗をかけばなんでも同じ、というわけではありません。
暑さで汗をかくのでは、脂肪は減らない
汗をかいて体重が減る場合、体脂肪率は上がってしまいます。どういうことかというと、発汗では脂肪が減らないということです。
例えば、体脂肪率30%の体重60kgのAさんがいたとします。夏の暑い中で趣味のガーデニングで汗をかき、体重が60kgから58kgに減ったとします。(2kg分の汗をかいたということですね)
このときの体脂肪率の変化はどうなるかというと、Aさんの体脂肪が30%なので、60kg×30%=18kg分の脂肪があることになります。
この状態から汗で2kg減り、体重は60kgから58kgになったとすると、減ったのは脂肪ではなく汗を生成するために生み出された水分です。
よって、18kgの脂肪は減らず、体重が58kgになったという事実のもとでは下記のようになります。
体脂肪率(%)の求め方:体脂肪÷体重×100
Aさんの体脂肪率の変化(%):18kg÷58kg×100≒31.03%
体脂肪率が1%ちょっと上がってしまいました。これでは体重の数字は減ってはいますが、健康的に痩せたかと言われれば、望ましい結果ではありませんね。
余談:サウナはどうなるか
参考までに、「サウナで汗をかく」ということに触れたいと思います。ダイエット中の方でサウナを利用される方も比較的多いのではないでしょうか?
サウナで汗をかくことも、上記で述べた通りの「体温上昇から脳や身体の組織を守る」ためであり、サウナで2kg体重が落ちても、その2kgが全て脂肪で落ちたわけでは有りません。
もっというと、サウナを上がって美味しい生ビールを2リットル飲めば、体重は元に戻ります。
サウナで汗をかく場合、大切になるのは温冷交代浴の効果
決して、サウナや汗をかく行為を悪いといっているわけではありません。大切なのはその効果をきちんと知ることと、その効果を得るための対応をすることです。
サウナで健康面の効果を得られるのは、器官の機能亢進・血流増加・疲労物質の排泄などが上げられますが、これらはサウナに入るだけではあまり効果的ではありません。
サウナを本当に活かすのであれば、身体を十分に温めたあと水風呂で冷やすことが大切です。そうすることで、神経や血管に与える刺激で身体の働きを活性化させることが出来、上記の効果を得ることができます。
ちなみに、ガーデニングなどで汗をかいた後、休んで身体を冷やし、また汗をかいて休んでを繰り返すと、サウナと同じような効果が得られます。
熱伝導を考えると夏の必死なダイエットは非効率的?
「熱伝導」という言葉を思い出してください。確か小学校の理科の授業で習うかと思います。
これは熱は高いところから低いところへ伝わることなのですが、私たち人間のような恒温動物(体温を常に一定に保つ動物)のダイエットで効率を意識するなら、とても大切なキーワードです。
まず結論としては寒い時期の方が効率的にダイエットができます。それはなぜかというと、私たちが恒温動物だからです。
熱伝導から考えると、熱は高いところから低いところへ伝わっていきます。そして私たちは外気温に関係なく、体温は1年を通じて36℃台で安定しています。
さて、ここで問題です。
- 冬の気温10℃の中で体温36℃を維持すること
- 夏の気温35℃の中で体温36℃を維持すること
どちらが体温を維持するためのエネルギーが必要でしょうか?
…といってもとてもシンプルな話で、外気温と体温の差が多い方がエネルギーが必要になります。何もしなくても外気温との差である+26℃の温度を維持するために頑張る環境と、ほとんど外気温と体温が同じ環境。さて、どちらでしょう?
効果的に痩せるなら冬の前後。その理由は?
外気温が凍るぐらいに低くても、体温に近い暑い温度であったとしても、身体は常に36℃を維持するように出来ています。そしてその体温を維持するためには熱量(カロリー)というエネルギーを消費します。
そして私たちの体熱は体温より低い空気中に熱伝導によって、体表面から失われています。その中で、体温を一定に保つため、失われる熱量と体温を維持するための熱量を等しくしなければなりません。
気温が下がると、体温より低い空気中に体熱を奪われるので、代謝をあげて熱量を得なければなりません。(体温を維持すためにカロリーを消費する)そのため、寒い中で体温を維持するために体内で脂肪を燃やす必要があり、基礎代謝で考えると理論値としては冬は夏より8%ほど上昇します。
そう、実は冬の方が夏よりも基礎代謝が高いのです。
太っている人の方がカロリーを消費する!体表面と熱量の関係
ここで季節ではなく太っている人とそうでない方の熱量について考えてみましょう。
- 160㎝:50kgのAさん
- 160㎝:90kgのBさん
冬の寒い時期だった場合、AさんBさんはどちらが沢山熱量を空気中に奪われ、その分の熱量を消費しなければならないでしょうか?
AさんとBさんは身長が同じで体重が違います。そのため、体重が重いBさんの方が太っている=身体の表面積が大きいです。
つまり、Bさんは空気と接触する体表面が大きいので、空気中に沢山の熱量を奪われます。そしてその分を補うための沢山熱量を消費しなければなりません。(奪われた熱を補うために基礎代謝を上げ体温を維持するということです。)
太っている方は体表面積が大きいので、体表面積の小さい方と比較すると多くの熱を奪われ、多くの熱を生み出す必要があるので、体表面積の小さい方より基礎代謝が高く痩せやすい状態です。(よって、太っているBさんの方が今回の話の恩恵を受けやすいんです。)
気温が高いときに運動しても、効率が悪い
異常気象の昨今、気温が体温と同じ36℃、または体温以上を記録する日も有ります。
気温が体温と同じ36℃の時、熱伝導は平衡するので代謝を一定に保つ代謝は変化しません。そして時には気温が体温以上にもなりますので、その場合熱伝導は温度の高い空気中から温度の低い体内へ伝達します。(熱中症の原因)
このような時は熱量の消費を落とす=代謝を下げて体温上昇を抑えることになります。同じ運動をする場合、気温を高い方が汗はかきますが、熱伝導や代謝の観点からすると、非効率的なのです。
何もしなくても相応の熱量を消費してしまう寒い環境と、代謝が下がってしまう暑い環境。同じ運動をする場合、寒い環境の方が身体の負担は少なく、熱中症などのリスクも少ないです。
冬場のダイエットをさらに効率的に!抑えたいポイントや食事
冬は夏よりも効率的に痩せるにはもってこいの季節です。そしてそれをもっと効率的にするにはいくつかの抑えたいポイントがあります。
食事の中で取り入れておきたい栄養素
冬の代謝をさらに上げるためには、そういった効果の期待できる食事を心がけることをおすすめします。ポイントとしては以下のものがあります。
- 身体を温める食材が基本。ショウガ、ねぎ、カプサイシンが豊富な唐辛子
- 脂質や糖質の代謝に必要なビタミンBを含む豚肉やレバー、マグロ
- 脂質の燃焼に必要なカルニチンを多く含む羊肉
寒いからといっての厚着や高い室温設定はほどほどに
冬の生活では必要以上の厚着や、高い設定温度の暖房は、冬の効率的なダイエットにはあまりお勧めできません。寒すぎて体調を崩すのは論外ですが、ほどよい寒冷刺激により熱を効率的に消費させ、代謝を上げるがお勧めです。
「冬場は寒いし、ダイエットはほどほどでいいかな」
そういう方も多いかもしれませんが、効率を意識して考えると、ある程度の生活負荷でも効率的にダイエットができます。暑い夏に必死に汗を流して水分を失うよりも、健康的に痩せるにはより大きな効果が期待できます。
これからの寒い季節、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。
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