漢方薬局でお客様と向き合っていると
「薬剤師としての仕事」と「人としての働き方」は
実はまったく別の軸で動いているのだと感じる瞬間があります。
正しい処方を選ぶことはもちろん大切ですが
それだけでは十分ではありません。
お客様の話をどう聴き
どんな姿勢で関わり
どんな気持ちで店頭に立つのか――。
同じ漢方をお渡ししても
そこに込められた“関わり方”によって
結果が大きく変わることがあります。
日々の接客の中で私が大切にしている
「仕事(work)」と「働く(working)」の違いについて
少し整理してみました。
漢方薬局における「仕事(work)」と「働く(working)」の違い
1. 仕事(work):薬剤師として“形になる成果”
外から見ても分かる、専門職としてのアウトプットです。
■ 主な仕事
- お客様の症状や体質を丁寧に把握する(問診・舌診・脈診など)
- 証を判断する(漢方独自の診断プロセス)
- 適切な処方を選ぶ(例:葛根湯、補中益気湯など)
- 用法・用量を決め、分かりやすく説明する
- 副作用や相互作用の確認
- 経過を見ながら処方を調整する
「正しい漢方処方を選び、改善につなげる」
これが仕事としての大きな成果です。
いわば “薬の治療” にあたります。
2. 働く(working):薬剤師として“どう関わるか”
こちらは、人としての姿勢や関わり方といった、より温度のある部分です。
■ 働き方の質
- お客様の話をどれだけ丁寧に聴けるか
- 不安や背景(生活・ストレス)への寄り添い
- 信頼関係をどう築くか
- 説明の分かりやすさ・安心感
■ 内面的な側面
- 「良くなってほしい」という気持ち
- 漢方への理解や探究心
- 忙しい時でも丁寧さを保てるか
同じ処方でも、
“ただ出す”のか、“気持ちに寄り添って出す”のかで結果が変わる
これが働くということ。
いわば “言葉の治療” に近い部分です。
3. 「仕事」と「働く」のズレが生むもの
● ズレ①:仕事は正しいが、働きが弱い
- 証は合っている、処方も適切
- でも説明が雑、共感がない
→ 信頼が育たず、結果として成果も揺らぐ
● ズレ②:働きは良いが、仕事が弱い
- 丁寧で親切、関係性は良い
- でも証の判断が甘い
→ 効果が出ず、長期的には信頼が崩れる
✨理想の形
「正しい処方(work) × 良い関わり(working)」
漢方薬局では特にこの2つが深く結びつきます。
- 証の判断に主観的要素がある
- 長期的な信頼関係が大切
- お客様の語りが診断の大部分を占める
だからこそ、
“どう聴くか・どう関係を築くか”が、仕事の質そのものを左右すると考えております。
🤔接客で意識したいこと
- 問診は「情報を集める場」であると同時に「関係をつくる場」
- 証の判断はデータだけでなく、お客様の語りの解釈も含まれる
- 説明は「正しさ」よりも「納得して実行できること」を大切にする
漢方薬局の仕事は
処方を選ぶだけでは完結しません。
お客様の言葉に耳を傾け
背景にある思いや生活に寄り添いながら
一緒に改善の道を探していく――。
その積み重ねが
信頼につながり
治療の力にもなっていくのだと思います。
これからも
「正しい処方」と「良い関わり」の両方を大切にしながら
店頭に立ち続けたい。
そんな思いで
お客様をお迎えしています。


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