頭痛というと
つい「同じような痛み」と思いがちですが
東洋医学ではそう考えません。
外からの寒さ・熱・湿気が原因で起こる頭痛がある一方で
体の内側――五臓の働きが乱れることで起こる頭痛 もあります。
そして
どの臓腑が乱れているかによって、
痛み方も
体の状態も
選ぶ漢方薬もまったく変わります。
これが東洋医学の大切な考え方である
「同病異治(どうびょういち)」
――同じ頭痛でも治し方が違うという視点です。
1. 肝陽上亢
■ 病因・病機(やさしい説明)
- ストレスや緊張で「頭に血がのぼる」ような状態
- イライラや怒りで気が上に突き上げ、頭に圧がかかる
- 下半身が弱り、上半身ばかり熱がこもるイメージ
🎯 一言でいうと
「ストレスで頭に気がのぼり、頭がガンガンする」
■ 病因・病機(専門的説明)
- 情志失調により肝気鬱結 → 肝陽が亢進
- 腎陰・肝陰不足により肝陽を抑えられず、上擾して頭痛
- 陰虚陽亢の典型パターン
■ 主な症状
- 頭痛(特に側頭部)
- めまい、耳鳴り
- イライラ、怒りっぽい
- 顔が赤い、のぼせ
- 脈:弦
- 舌:紅、苔薄
■ 主な処方と方意
● 釣藤散(ちょうとうさん)
肝陽を抑え、頭部の上衝を鎮める
- 気血の巡りを整え、頭痛・めまいを改善
2. 肝火上炎(かんかじょうえん)
■ 病因・病機(やさしい説明)
- 強い怒り・ストレスで「カッ」と火がついたような状態
- 頭に熱が一気に上がり、痛みが強くなる
- 目や顔が熱く、赤くなりやすい
🎯 一言でいうと
「怒りの熱が頭にのぼって痛む」
■ 病因・病機(専門的説明)
- 肝気鬱結が極まり、肝火となって上炎
- 火熱が上擾し、頭痛・目赤・煩躁を生じる
■ 主な症状
- 激しい頭痛(脹痛・灼痛)
- 顔面紅潮、目の充血
- 口苦、怒りっぽい
- 脈:弦数
- 舌:紅、苔黄
■ 主な処方と方意
● 龍胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)
肝胆の実火を瀉し、湿熱を除く
- 目赤・頭痛・怒りっぽさに適応
3. 脾虚不運(ひきょふうん)
■ 病因・病機(やさしい説明)
- 胃腸が弱ってエネルギーが作れず、頭に十分な栄養が届かない
- だるさ・疲れとともに頭が重く痛む
- 食後や疲労時に悪化しやすい
🎯 一言でいうと
「胃腸が弱って頭に力が回らず、重く痛む」
■ 病因・病機(専門的説明)
- 脾気虚により運化失調 → 清陽が頭に昇らず頭痛
- 気虚により気血不足 → 頭痛・倦怠
■ 主な症状
- 頭重感
- 倦怠感、食欲不振
- 食後に悪化
- 脈:虚弱
- 舌:淡、苔白
■ 主な処方と方意
■ 六君子湯(りっくんしとう)
■ 補中益気湯 (ほちゅうえっきとう)
● 補中益気湯
- 脾気を補い、清陽の上昇を助ける
- 気虚による頭痛・倦怠に最適
● 六君子湯
- 脾胃の気虚+湿を取り除き、頭重を改善
🌙 4. 腎虚(じんきょ)
■ 病因・病機(やさしい説明)
- 加齢や慢性疲労で「体のエネルギーの根」が弱る
- 頭を支える力が不足し、ふわふわした頭痛が起こる
- 腰や足のだるさを伴うことが多い
🎯 一言でいうと
「体の土台が弱って頭に力が届かず痛む」
■ 病因・病機(専門的説明)
- 腎精不足により髄海が満たされず、頭痛
- 腎陰虚 → 虚火上炎
- 腎陽虚 → 温煦不足
■ 主な症状
- ふわっとした頭痛
- 腰膝酸軟、疲れやすい
- 耳鳴り、健忘
- 脈:沈細
- 舌:淡または紅少苔
■ 主な処方と方意
● 六味地黄丸(ろくみじおうがん)(腎陰虚)
● 八味地黄丸(はちみじおうがん)(腎陽虚)
● 六味地黄丸
- 腎陰を補い、虚火を鎮める
- 慢性頭痛・めまいに適応
● 八味地黄丸
- 腎陽を温め、下焦の虚寒を改善
5. 瘀血(おけつ)
■ 病因・病機(やさしい説明)
- 血の流れが悪く、古い血が滞って頭のどこかが締めつけられる
- 固まった血が邪魔をして、刺すような痛みが出る
🎯 一言でいうと
「血の滞りで頭のどこかがズキッと痛む」
■ 病因・病機(専門的説明)
- 瘀血が経絡を阻滞し、頭部の気血運行が妨げられる
- 不通則痛の典型
■ 主な症状
- 刺すような固定痛
- 夜間に悪化
- 月経不順・血塊
- 舌:紫暗、瘀点
- 脈:渋
■ 主な処方と方意
● 血府逐瘀湯(けっぷちくおとう)
- 上焦の瘀血を動かし、頭痛・胸苦しさを改善
比較表
| 分類 | やさしい病機 | 専門的病機 | 主症状 | 主な処方 | 方意 |
| 肝陽上亢 | ストレスで頭に気がのぼる | 肝陽亢進 陰虚陽亢 | 側頭痛 のぼせ | 釣藤散 | 平肝潜陽 |
| 肝火上炎 | 怒りの熱が頭にのぼる | 肝火上炎 | 脹痛 目赤 | 龍胆瀉肝湯 | 清肝瀉火 |
| 脾虚不運 | 胃腸が弱り頭に力が回らない | 脾気虚 清陽不昇 | 頭重 倦怠 | 六君子湯 | 補気・昇陽 |
| 腎虚 | 体の土台が弱る | 腎精不足 髄海不足 | ふわふわ 頭痛 | 六味地黄丸 | 補腎 |
| 瘀血 | 血の滞りで刺す痛み | 瘀血阻滞 | 固定痛 | 血府逐瘀湯 | 活血化瘀 |
このように
頭痛といっても原因はさまざまです。
外からの影響で起こる頭痛もあれば、
体の内側のバランスが崩れて起こる頭痛もあります。
そして、
原因が違えば、選ぶ漢方薬も変わる。
これが東洋医学の「同病異治」という考え方です。
自分の頭痛がどのタイプなのかを知ることで、 より体に合った治し方が見つかります。


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