私たちが「頭痛」と聞くと
西洋医学ではまず鎮痛薬――たとえばバファリンのような薬を思い浮かべます。
しかし、東洋医学では
同じ“頭痛”でも 原因・症状・痛みの出方が人によってまったく違う と考えます。
そのため東洋医学では
「同じ頭痛でも、原因が違えば使う漢方薬も変わる」
という「同病異治(どうびょういち)」の考え方を大切にします。
頭痛を引き起こす外からの影響(外感)には、
風寒・風熱・風湿 の3つのタイプがあり、
それぞれで痛み方も、体の状態も、選ぶ漢方薬も異なります。
1. 風寒頭痛
■ 病因・病機(頭痛の原因と病気の仕組み)
- 冷たい風に当たって体がキュッと縮こまるような状態
- 体の表面が冷えて固まり、血の流れが悪くなる
- 温かい血が頭に届きにくくなり、頭がズキッと痛む
- 体が冷えているので、汗も出ず、寒気が強い
🎯 一言でいうと
「寒さで体が固まり、血が巡らず頭が痛くなる」
専門的な説明に言い換えると
- 外感の風寒邪が体表(肌表)に侵入
- 衛陽の宣散が阻害され、経絡が収縮して気血の流れが滞る
- 清陽が頭に上がらず、頭痛が発生
- 汗は出ず、寒が強いのが特徴
寒邪が経絡を閉じ、気血の流れを阻む → 頭痛
■ 主な症状
- 強い頭痛(後頭部に多い)
- 悪寒が強く、発熱は軽い
- 無汗
- 体が重くない
- 鼻水は透明でサラサラ
- 脈:浮緊
- 舌苔:薄白
■ 主な処方
● 川芎茶調散
■ 方意(処方の狙い)
● 川芎茶調散
- 疏風散寒・止痛
- 川芎で頭部の気血を巡らせ、茶葉で軽く発汗させて風寒を散らす
- 「軽い風寒頭痛の第一選択」
2. 風熱頭痛(風熱上擾)
■ 病因・病機
- 熱のある風邪で、体の中に熱がこもっている状態
- 熱が頭のほうに上がってきて、頭の中がパンパンに張るように痛む
- 熱の影響で、目が赤くなったり、喉が痛くなったりしやすい
🎯 一言でいうと
「熱が頭にのぼって、頭がカッと痛む」
専門的な説明に言い換えると
- 外感の風熱邪が肺・衛気を犯し、熱が上焦にこもる
- 熱が上昇して頭部に炎症性の充満感・痛みを起こす
- 熱邪が気分を乱し、目や咽に症状が出やすい
熱が上に昇り、頭部を灼く → 頭痛
■ 主な症状
- 頭痛が張って痛む・脹痛
- 発熱が強く、悪寒は軽い
- 口渇・咽喉痛・目の充血
- 鼻水は黄色
- 脈:浮数
- 舌:紅、苔は薄黄
■ 主な処方と方意
● 銀翹散
- 辛涼解表・清熱解毒
- 風熱の初期に最もよく使う
- 咽痛・発熱・頭痛に適応
● 荊芥連翹湯
- 風熱を散らし、上焦の鬱熱を清す
- 目・鼻・咽の炎症が強いタイプに
3. 風湿頭痛(風湿阻滞)
■ 病因・病機
- 湿気の多い日に体が重だるくなる感じ
- 湿気が体の中に入り込み、気の流れがドロッとして重くなる
- 頭にスッと気が上がらず、頭が重く、ぼんやり痛む
🎯 一言でいうと
「湿気で体が重くなり、頭もズーンと重く痛む」
専門的な説明に言い換えると
- 外感の風湿邪が肌表・経絡に停滞
- 湿邪は重濁で、気機を阻み、頭部に重だるさを生じる
- 清陽が頭に昇らず、頭が「重く痛む」
湿が重く濁り、気の流れを妨げる → 頭重感
■ 主な症状
- 頭が重い・締め付けられるような痛み
- 体が重だるい
- 雨天・湿気で悪化
- 胃腸の不調(食欲不振・胸苦しさ)
- 脈:濡(ねっとり)
- 舌苔:白膩(ねばつく白苔)
■ 主な処方と方意
● 藿香正気散
- 化湿和中・解表散寒
- 湿邪が中焦(胃腸)に停滞し、頭重・悪心・倦怠を伴うタイプに
- 湿気の多い季節の「だるい風邪」に最適
比較表
| 分類 | 病因病機 | 主症状 | 主な処方 | 方意 |
| 風寒頭痛 | 風寒が表を閉 経絡を阻む | 強い頭痛、悪寒強 無汗、透明鼻水 | 川芎茶調散 | 疏風散寒・止痛 |
| 風熱頭痛 | 風熱が上焦にこもり 熱が頭を灼く | 脹痛、発熱強、咽痛 目赤、黄色鼻水 | 銀翹散 荊芥連翹湯 | 辛涼解表・清熱 |
| 風湿頭痛 | 風湿が気機を阻み 清陽が昇らない | 頭重、体重、湿気で悪化 白膩苔 | 藿香正気散 | 祛湿・和中・止痛 |
このように、東洋医学では頭痛を「ひとつの症状」としてではなく、
どんな原因で
どんな体の反応が起きているかを見極めて治療します。
寒さが原因なのか
熱なのか
湿気なのか――
その違いを理解することで
より体に合った漢方薬を選ぶことができます。
「同じ頭痛でも、人によって治し方が違う」
これが東洋医学の魅力です。


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