枸杞子(クコシ)は
古来より滋養強壮の妙薬として知られ
現代の中医学でも
「肝血・肝陰・腎精」を補う
代表的な薬物として位置づけられています。
特に肝の働きに深く関わり
目・情緒・生殖機能・老化など幅広い症状に応用可能です。
枸杞子の性味・帰経から
効能、肝疾患への臨床応用までを体系的に整理しまとめてみました。
枸杞子(クコシ)=Lycium barbarum
- 性味・帰経
- 効能
- 肝の疾病への使い方
- その中医学的根拠を、臨床で使いやすい形で体系化してまとめます。
■1. 枸杞子の性味・帰経
● 性味
- 甘・平
※ 甘味で補う力があり、平性のため“温めすぎず、冷やしすぎない”
→ 老若男女に使いやすい。
● 帰経
- 肝・腎・肺
特に重要なのは 肝と腎。
■2. 枸杞子の主要な効能
① 補肝腎(肝血・腎精を補う)
- 枸杞子の中心的効能。→ 肝血不足・腎陰不足に適応。
② 益精明目(目を明るくする)
- 肝は“目に開竅する”ため、肝血を補う枸杞子で改善。
③ 潤肺補虚(肺陰を補い、乾燥の咳を止める)
- 肺陰不足の乾燥咳に。
④ 滋陰(陰液を増やす)
- 体を潤し、虚熱を抑える。
■3. 肝に対してどのように作用するか
(臓腑の働きに基づく理解)
肝は「血を蔵し、疏泄を主る」
枸杞子はこれを両方助ける。
肝血を補う → 目・筋肉・情緒が安定
肝陰を養う → 虚熱を抑える
●肝腎同源のため、腎精も補う
→ 成長・ホルモン・生殖機能まで改善が広がる
4. 肝の疾病に対する枸杞子の応用(効果と根拠)
以下は、枸杞子が「肝血・肝陰を補う」作用に基づく。
◎ A. 肝血虚(最も適応)
主な症状
- 目の乾燥・かすみ
- 疲れ目
- 夜盲
- こむら返り
- 月経量が少ない
- 不眠・夢が多い
枸杞子の効果
- 肝血を補って視力改善
- 眼精疲労の軽減
- 肝血による筋肉・腱の滋養
- 月経調整
中医学的根拠
肝血が不足すると、
→ 目・筋・情緒が不安定
甘味で滋養する枸杞子が肝血を増す。
◎ B. 肝陰虚(過労・加齢・慢性ストレス)
症状
- 目が乾く
- 顔や手足のほてり
- のぼせ
- 夜間の目の疲労
- 不眠・焦燥
枸杞子の効果
- 肝陰を補い、虚熱を抑える
- 不眠・のぼせの改善
- ドライアイが減る
根拠
肝陰が不足すると“虚火”が生じる。
枸杞子は滋陰して虚熱を抑制する。
◎ C. 肝気鬱結(ストレス・情緒不安定)
※ これは枸杞子単独より肝血虚+気鬱が絡むケースに用いる。
症状
- イライラ
- 抑うつ
- 過敏
- PMS(情緒変動)
- 胸脇の張り
枸杞子の効果(単独では軽度)
- 肝血を補うことで疏泄機能が整う
- 肝気鬱結による情緒不安定の緩和
配合
- 柴胡(疏肝)
- 香附(気滞改善)
- 当帰+枸杞子(肝血を補い疏肝を助ける)
◎ D. 肝腎虚(加齢・過労・生殖力の低下)
症状
- 聴力低下
- 目の疲れ
- 腰膝酸軟
- 不妊
- 勃起力低下
- 生理不順
- 白髪が増える
枸杞子の効果
- 肝血・腎精の両方を補う
- 生殖機能・成長のサポート
- 目・耳の機能改善
根拠
肝腎同源のため、肝血と腎精は一体。
枸杞子は双方を補うため「老化」に幅広く使える。
◎ E. 肝火上炎(イライラ・赤ら顔・目の充血)
※ 枸杞子単独では弱いが「肝陰虚→虚火」には有効。
配合
- 菊花(枸杞子+菊花=杞菊地黄丸)
- 知母・黄柏(知柏地黄丸)
→ 目の充血・のぼせ・イライラに。
■5. 肝の病で枸杞子を使う代表処方
● 六味地黄丸(腎陰虚)
→ 目の疲れ・耳鳴り・腰痛
● 杞菊地黄丸(肝腎陰虚+目の症状)
→ ドライアイ、視力低下、眼精疲労
(枸杞子+菊花がポイント)
● 逍遙散+枸杞子(肝血虚+肝鬱)
→ PMS、イライラ、疲れ目
● 当帰+枸杞子(補血+明目)
→ 血虚による視力低下・生理不順
6. 枸杞子を肝に使う“根拠のまとめ”
◎ ① 肝は「血を蔵す」
→ 枸杞子は甘平で肝血を増やす
→ 目・筋・自律神経が安定
◎ ② 肝は「疏泄を主る」
→ 肝血が充実すると疏泄機能が改善
→ 情緒の安定につながる
◎ ③ 肝腎同源
→ 枸杞子は腎精も補うため
“肝腎虚”の諸症(目、耳、生殖機能)を改善
◎ ④ 目は「肝の竅」
→ 眼疾患は枸杞子の最重要適応
7. 臨床的まとめ(ポイント)
- 枸杞子= 肝血・肝陰・腎精を補う甘平の良薬
- 肝の疾病(肝血虚・肝陰虚・肝腎虚)に広く使える
- 目の症状、情緒、月経、生殖、老化に特に有効
- 加齢性眼疾患、ドライアイ、PMS、不妊に適応が広い
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枸杞子は
「甘平で肝血を養い、肝腎を補う」点において
肝の疾病に極めて応用範囲が広い生薬です。
目の症状から情緒の安定
月経や生殖機能の改善
さらには加齢性疾患まで
臨床で多面的に活用できます。
肝血虚・肝陰虚・肝腎虚といった病態を見極め
適切に枸杞子を組み合わせることで
安心感と希望を持った治療が可能となると思います。


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