排尿痛と性交痛は部位も状況も異なるように見えますが
その痛みの「質感」や「背景」に注目することで
共通の原因=証:原因を見抜くことができます。
中医学では「異病同治」の考え方に基づき
痛みの性質・寒熱・湿乾・気血陰の偏りを手がかりに
身体の内側で起きているバランスの乱れを診断します。
このチェックリストは
問診を通じて6つの代表的な証を見極めるためのツールです。
Yes/No形式で答えることで、痛みの根にある証が自然と浮かび上がってきます。
性交痛・排尿痛:6タイプ弁証のための問診チェックリスト
【1)腎陰虚タイプ(乾燥・ヒリヒリ・虚熱)】
症状チェック(Yes / No)
- □ 性交時、乾燥して摩擦痛がある
- □ 排尿後にヒリヒリする
- □ 夜にほてる(五心煩熱)
- □ 口や喉が乾きやすい
- □ 寝汗がある
- □ 膣分泌が少ない
- □ 舌が紅く、苔が少ない
ポイント
乾燥+ヒリヒリ+夜間悪化 → 陰虚の典型。
熱いような、しかし実熱ではない「虚熱感」が鍵。
【2)血虚タイプ(潤い不足・乾燥痛・疲労)】
症状チェック(Yes / No)
- □ 膣の潤いが少なく、痛みは主に乾燥による
- □ 月経量が少ない or 遅れがち
- □ 顔色が白い・疲れやすい
- □ 爪が薄い / 抜け毛が多い
- □ めまい・立ちくらみ
- □ 月経後に悪化しやすい
- □ 舌が淡い
ポイント
乾燥+血の不足サイン(爪・月経・疲れ)があるかが決め手。
【3)下焦湿熱タイプ(最頻度:焼ける痛み・ムレ・臭い)】
症状チェック(Yes / No)
- □ 排尿時に焼けるような痛みがある
- □ 尿が濃い・黄色・臭いが強い
- □ 尿が少し濁る
- □ 外陰部のムレ・かゆみ
- □ おりものが黄色・粘稠
- □ 下腹部の重だるさ
- □ 舌に黄苔があり、やや湿っている
ポイント
排尿痛=焼けつく痛みなら湿熱
【4)気滞タイプ(締め付け痛・ストレス関連)】
症状チェック(Yes / No)
- □ 性交時に圧迫されるような痛み
- □ 深いところが痛いが、ヒリヒリや熱さは少ない
- □ ストレスがたまると悪化する
- □ 生理前に悪化しやすい
- □ 胸または脇が張る
- □ イライラしやすい
- □ 舌:薄い苔、脈が弦
ポイント
痛みがギューッと締められる/圧迫される系なら気滞。
炎症ではなく“緊張”が中心。
【5)瘀血タイプ(刺す痛み・一点痛・深部痛)】
症状チェック(Yes / No)
- □ 性交時に針で刺すような痛み
- □ 痛みが一点に集中している
- □ 深く挿入したときに痛い
- □ 月経痛が強い・血塊が多い
- □ 経血が黒ずむ
- □ 触るとしこり感・鈍い深部痛がある
- □ 舌に瘀点・暗紫色
ポイント
刺痛(とくに深部)→ 瘀血の決定打。
骨盤うっ血症候群とも対応。
【6)寒凝・腎陽虚タイプ(冷えによる痛み)】
症状チェック(Yes / No)
- □ 冷えると痛みが悪化
- □ 温めると楽になる
- □ 排尿痛というよりひんやり痛い
- □ 下腹部・腰が冷える
- □ 尿が冷たく感じる
- □ 性交後に冷えて痛むことがある
- □ 舌が淡い / 水っぽい苔
ポイント
冷えで“締まって”痛む → 寒凝。
熱・炎症とは全く違う系統の痛み。
◆【タイプ別の最重要鑑別ポイント(1行まとめ)】
- 腎陰虚:乾燥+ヒリヒリ(夜に悪化)
- 血虚:乾燥+疲労+月経少
- 湿熱:焼ける痛み+尿が濃い
- 気滞:圧迫痛+ストレス関連
- 瘀血:刺痛・深部痛・月経痛
- 寒凝(陽虚):冷えると痛む
痛みは、身体が発する「静かな声」であり
その質感を聞き取ることが診断の第一歩です。
排尿痛も性交痛も
乾燥・焼けつき・刺す・締めつけ・冷えといった感覚の違いが
証の違いを教えてくれます。
このチェックリストを通じて
痛みの背景にある「気・血・陰・寒熱・湿」の乱れを見つけ出し
より的確な処方とケアにつなげていくことができます。
まさに中医学「異病同治」の智慧が、ここに生きています。
◎あわせて読みたい記事はこちら↓


コメント