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 漢方薬局 月火水金土
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痛いの痛いの飛んでいけ③

「痛いの痛いの飛んでいけ」――
この言葉と手当てには、神経の働きと気血の流れが深く関わっています。
西洋医学ではAβ線維やC線維という神経が痛みの伝達に関与し、
中医学では**“通じる”か“滞る”かが痛みの有無を決めると考えます。
ここからは、神経線維の生理作用と中医学的な読み替え、
そしてそれに対応する
漢方処方と方意**について整理してまいります。

ゲートコントロール理論(Gate Control Theory)」を中医学的に読み替えると、
線維の活性=“通じる”治療(通則不痛)
C線維の抑制=“滞りを除く”治療(不通則痛)
として捉えることができます。

以下にそれぞれの神経線維の生理作用と、中医学的対応・代表方剤・方意を整理します

目次

Aβ線維活性による痛みの改善

西洋医学的

  • 触圧刺激・温熱・マッサージなどでAβ線維が興奮すると、
    脊髄後角の痛覚伝達(C線維・Aδ線維)を抑制し、痛みが軽減される。
  • つまり「通じる」状態を作る=経絡の疏通

中医学的対応

→ 「疏通経絡」「理気活血」「通則不痛」
すなわち、経絡・気血の通りを良くする処方

代表的処方と方意

方剤方意(働き)適応(Aβ線維活性を促す状況)
疎経活血湯風・寒・湿による経絡阻滞を除き 気血を巡らす慢性筋肉痛、関節痛 しびれ、瘀血性疼痛
独活寄生湯補肝腎・強筋骨・祛風湿・止痛慢性腰痛・坐骨神経痛
葛根湯解肌・発汗により経脈を通す初期の肩こり・筋緊張性頭痛
川芎茶調散疏風止痛・調気活血頭痛・筋緊張性疼痛 血流不良型頭痛
桂枝加朮附湯温経通絡・祛風除湿冷え性・寒湿による関節痛

経絡を「疏通」し、陽気と血流を巡らせることで「通則不痛」を達成。
→ Aβ線維の働きを助ける=通経活血・理気止痛


 C線維活性(痛み・痒み)抑制による改善

西洋医学的

  • C線維は遅伝導性の持続痛・慢性痛・痒みを伝える。
  • その過剰興奮を抑えることが、痛み・痒みの鎮静に重要。

☑中医学的対応

→ 「気血の阻滞」「瘀血・気滞・湿熱」などの実証的停滞を除く
すなわち、“滞りを取り去り、炎症・瘀血・熱毒を除く”処方

代表的処方と方意

方剤方意(働き)適応(C線維過剰興奮)
桃核承気湯破血下瘀・行血止痛瘀血による刺痛・月経痛・頭痛・慢性疼痛
血府逐瘀湯活血化瘀・行気止痛慢性炎症性疼痛・頭痛・胸背部痛・瘀血性不眠
桂枝茯苓丸活血化瘀・去瘀生新血行障害・月経異常・瘀血体質の疼痛
加味逍遙散疏肝理気・清熱除煩ストレス性気滞・炎症・C線維性痒み(アトピーなど)
竜胆瀉肝湯清熱瀉火・利湿湿熱による皮膚掻痒・外陰部の熱感・炎症
温清飲清熱涼血・調和血分瘀熱・血熱による皮膚炎・痒み・慢性炎症

「滞れば痛む・熱すれば痒む」——
よって瘀血・気滞・湿熱を除き、C線維の興奮を鎮める。
行気活血・清熱解毒・涼血止痒


中医学×神経線維対応まとめ

神経生理的役割中医学的対応代表方剤例
A線維触圧刺激による抑制性ゲート (痛みを通さない)疏通経絡 理気活血疎経活血湯 独活寄生湯・葛根湯
C線維持続痛・痒み・炎症感覚を伝える行気化瘀・清熱涼血 活血解毒桃核承気湯 血府逐瘀湯・温清飲

臨床的応用(神経と方意の統合)

症状主因推奨方向処方例
急性筋緊張・肩こり経絡の気滞疏通経絡(Aβ活性)葛根湯・疎経活血湯
慢性腰痛・冷え痛腎虚・寒湿温経通絡(Aβ活性)独活寄生湯・桂枝加朮附湯
月経痛・瘀血痛血行障害 (瘀血)行気活血(C線維抑制)桂枝茯苓丸・桃核承気湯
アトピー・痒み血熱・瘀血・湿熱涼血・清熱・化瘀 (C線維抑制)温清飲・加味逍遙散 竜胆瀉肝湯

このように、Aβ線維の活性化による痛みの抑制は、
中医学で言えば「疏通経絡」「理気活血」に通じ、
一方、C線維の過剰興奮による慢性痛や痒みは、
「瘀血・気滞・湿熱」を除くことで鎮めることができます。
神経と気血の対応を理解することで、
痛みの性質に応じた漢方処方の選択がより的確に行えるのです。

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この記事を書いた人

埼玉県羽生市にある漢方薬局・鍼灸院 眞健堂です。
眞健堂は1987年、埼玉県羽生市に漢方薬局として開業いたしました。
2021年より鍼灸院を併設。
「眞ごころをもって、地域の皆様の健康をサポートする」ことをモットーに、地域の皆様が、抱えている不調から解放され、毎日をもっと楽に、楽しく、豊かに過ごしていけるように寄り添い続けます。

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