中医学では、妊娠は単なる受精の成功ではなく
“天地人の調和”と“経脈の通暢”によって成り立つと考えます。
中でも
衝脈と任脈は女性の生殖機能を司る重要な経脈であり
胞宮(子宮)を養い、命を迎える準備を整える役割を担っています。
これらの経脈が不調に陥ると、妊娠の成立は難しくなります。
命の芽生えには
種だけでなく、土壌と水脈が必要です。
衝脈は“血の海”として栄養を運び
任脈は“陰の主脈”として潤いと統合を司ります。
この二つの経脈が滞れば、胞宮は乾き
命の種は根を張ることができません。
衝脈と任脈はどちらも「奇経八脈」に属し
生殖・血・陰陽調整に深く関わる重要な経脈です。
特に
女性では月経・妊娠・更年期など生理・ホルモンに関与します。
衝脈と任脈の共通点と相違点を、構造・機能・臨床意義の面から比較して詳しく解説します。
衝脈と任脈の比較表
| 項目 | 衝脈 | 任脈 |
| 所属 | 奇経八脈 | 奇経八脈 |
| 起始部 | 腎中(胞中) | 下腹部(会陰) |
| 走行 | 下腹部→臍→胸→喉→顔面 | 会陰→下腹→臍→胸→喉→顎 |
| 主るもの | 血を主る(「血海」) | 陰を主る(「諸陰の海」) |
| 作用 | 全身の血流を統括 月経・排卵・妊娠維持 | 肝・脾・腎・任の陰精を滋養。 子宮・膣・妊娠維持の主幹。 |
| 別名・性質 | 十二経の「海」、血の総本。 | 陰脈の「海」、陰液の総本。 |
| 肝腎の関係 | 肝血・腎精を連結。肝腎同源 | 腎精を基とし、陰液・子宮・胞脈を滋養。 |
| 中医学的機能 | 血を貯え・調節・推動。 気血の均衡を保つ。 | 陰を滋養し、衝脈・胞宮を調整。 |
| 西洋医学的対応 | 子宮・卵巣・子宮動脈 骨盤内血流の調整。 | 視床下部-下垂体-性腺軸による ホルモン調整。 |
| 病理 | 血虚・瘀血・月経不順 不妊・子宮出血 | 陰虚・精不足 帯下・月経過少・不妊・流産 |
| 主な証候 | 月経過多・崩漏・少腹急満 胸悶・逆気上衝 | 帯下・月経不順・不妊 性機能低下・更年期症状 |
| 代表方剤 | 温経湯・芎帰膠艾湯 四物湯(養血調経) | 当帰芍薬散・八珍湯・二至丸 (補腎養陰・調任) |
| 経穴 | 衝脈:公孫(脾経) | 任脈:列缺(肺経) |
| 臨床 | 「血の海」・血流の調整 血の動き | 「陰の海」・陰液の滋養 生命の基盤 |
🩸 相互関係の理解
- 衝脈と任脈は**「母体の血と陰を協調して生命を養う」**という関係。
- 任脈は陰液を作り出す「水源」、衝脈はそれを全身に巡らせる「河川」。
- このため:
- 血虚 → 衝脈の源が不足し、月経量減少や無月経。
- 陰虚 → 任脈の潤いが失われ、乾燥や不妊。
- 瘀血 → 衝任の通りが悪くなり、月経痛や子宮筋腫。
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🌿 中医的たとえ
| 比喩 | 衝脈 | 任脈 |
| 河川にたとえると | 水を運ぶ本流 | 水源を蓄える湖 |
| 経絡システムでの役割 | 十二経の血流を統括 | 陰経を統率・滋養 |
| 臓腑との対応 | 肝・脾・腎 | 腎・肝・肺・脾 |
| 生理現象 | 月経・妊娠・分娩 | 胎養・哺乳・陰液維持 |
🧩 西洋医学との対応図(要約)
| 中医 | 西洋医学的機能 |
| 衝脈 | 卵巣・子宮・骨盤内血流の調整機構、子宮動脈の拍動性供血 |
| 任脈 | 視床下部—下垂体—卵巣系のホルモン分泌軸、子宮内膜周期調節 |
| 衝任の調和 | ホルモンリズムの安定、月経周期・受精・妊娠維持 |
まとめ
任脈は陰を養い、衝脈は血をめぐらす。
陰(任)と血(衝)は相互に依存し、生命と生殖を支える。
この2脈の失調は、月経不順・不妊・更年期障害などの根本にあります。
したがって、治療では「補任以養陰」「調衝以理血」の両面から整えることが重要です。
このように
衝脈と任脈の不調は、胞宮:子宮の栄養・潤い・通暢を損ない
不妊症の根本的な原因となり得ます。
妊娠を目指す治療においては、ホルモンや排卵だけでなく
これらの経脈の調整を通じて
身体全体の“命を迎える場”を整えることが重要なのです。
衝脈と任脈は、命の通り道。
その道が澄み、流れが整えば、胞宮は静かに命を迎える準備を始めます。
不妊とは、命の流れが滞った状態。
だからこそ
経脈を整えることは、命の可能性をひらくことなのです。


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