肝気上逆（かんきじょうぎゃく）の病理

1. 肝気上逆とは？

☑ 肝の気が過度に上昇し、頭部や上半身に異常な影響を及ぼす病理状態。
☑ 「肝陽上亢」や「肝火上炎」へと発展しやすい。
☑ ストレスや怒り、精神的緊張が大きな誘因となる。
☑ 頭痛・めまい・のぼせ・耳鳴り・顔面紅潮・目の充血・高血圧などが主な症状。

---

2. 肝気上逆の病因（発生要因）

病因の分類	具体的な病因	病理的影響
七情（精神的要因）	怒り・イライラ・緊張	肝気が急激に上昇し、頭部を犯す
飲食の不摂生	辛いもの・酒・脂っこい食事	肝火を助長し、気機の乱れを悪化
過労・睡眠不足	疲労蓄積・ストレス増大	肝血不足が起こり、気の上昇を抑えられない
陰虚（体内の潤い不足）	長期の慢性病・老化	陰が不足し、肝陽を制御できず気の上昇を招く

---

3. 肝気上逆の病理メカニズム

🌿 正常な肝気の流れ

• 肝は 「昇発（上昇）」と「疏泄（広がる）」 の働きを持つ。
• 肝気は適度に上昇しながら、全身の気の流れを調整する。

🌪 肝気上逆の異常な流れ

• ストレスや怒りが加わることで、肝の疏泄機能が過剰になり、気が異常に上昇する。
• 「肝陽上亢」や「肝火上炎」に進行すると、熱や炎症症状が加わる。
• 結果として 頭部や上半身の症状（頭痛・めまい・のぼせ・耳鳴り）が出る。

---

4. 肝気上逆の影響を受ける臓腑と症状

影響を受ける臓腑	病証名	主な症状
頭部（脳）	肝気上逆	頭痛・めまい・のぼせ・顔面紅潮
耳（聴覚）	肝陽上亢	耳鳴り・難聴
目（視覚）	肝火上炎	目の充血・眼精疲労・視界がぼやける
上半身（胸部）	肝火犯肺	胸の圧迫感・動悸・息切れ
消化器系（胃）	肝気犯胃	胃痛・ゲップ・吐き気

---

5. 肝気上逆の主な症状

症状の種類	具体的な症状
頭部症状	頭痛、めまい、のぼせ、目の充血、耳鳴り
精神症状	イライラ、怒りっぽい、興奮しやすい、不眠
消化器症状	胃痛、吐き気、食欲不振
呼吸器症状	胸の圧迫感、ため息が多い

---

6. 肝気上逆の悪化条件

悪化要因	影響
ストレス・怒り	肝の気が急激に上昇し、頭部を犯す
辛いもの・酒の摂取	肝火が助長され、気の上昇が強くなる
睡眠不足・過労	陰血不足が悪化し、肝気の上昇を制御できなくなる
長時間の座り仕事	気滞が進行し、肝気の異常な上昇を助長

---

7. 肝気上逆の問診ポイント

• ストレスや怒りを感じることが多いか？
• 頭痛やめまい、のぼせを感じるか？
• 目の充血や視界のぼやけがあるか？
• 耳鳴りや難聴があるか？
• 不眠やイライラが強いか？

---

★まとめ

• 「肝気上逆」とは、肝の気が異常に上昇し、頭部や上半身に影響を及ぼす状態。
• 主な原因は「ストレス・怒り・暴飲暴食・睡眠不足」。
• 症状は「頭痛・めまい・のぼせ・耳鳴り・目の充血」。
• 治療は「疏肝降逆・清肝瀉火・滋陰潜陽」が基本。

🌿 「気の流れを整え、リラックスを心がけよう！」