胃陽虚とは、胃の陽気(温めるエネルギー)が不足し、消化・吸収の働きが低下する病態です。
胃は「受納(食物を受け入れる)」と「腐熟(消化する)」の機能を持ちますが、
陽気が不足すると冷えによる消化不良、胃の不快感、下痢、腹部の冷えなどが起こります。
長期化すると胃腸の虚寒が進み、栄養吸収が悪化します。
目次
胃陽虚の病因(発生要因)
1.脾胃の虚弱体質
- 先天的に胃腸が冷えやすい体質
2.冷飲食の過剰摂取
- 冷たい食べ物・飲み物の取りすぎが胃の陽気を損傷
3.慢性胃腸疾患
- 長期間の胃炎・胃潰瘍・胃腸の病気が陽気を消耗
4.過労・ストレス
- 胃気の生成が低下し、胃陽虚に進行
5.老化や体力低下
- 胃の機能が衰え、消化力が低下
6.寒邪の侵入
- 外界の寒冷環境や冷たい飲食により、胃の陽気が損なわれる
胃陽虚の病理メカニズム
1.胃の陽気不足
- 胃を温める力が低下し、消化機能が衰える
2.消化機能の低下
- 食欲不振、消化不良、胃もたれ、膨満感が現れる
3.寒湿の内生
- 胃の寒冷により、水分代謝が滞り、痰湿や冷えによる下痢が発生
4.腸の機能低下
- 過剰な水分が腸に流れ、泥状便や水様便を伴う下痢になる
5.陽虚が進行すると脾腎陽虚に発展
- 長期間続くと、脾陽虚・腎陽虚も合併し、冷えやむくみが強くなる。
胃陽虚の影響を受ける臓腑と症状
1.胃(消化機能の低下)
- 食欲不振、胃もたれ、膨満感、悪心
2.脾(運化作用の低下)
- 倦怠感、手足の冷え、浮腫
3.腎(陽虚による冷えの進行)
- 下痢が悪化し、腎陽虚を伴うと夜間頻尿や腰の冷えが出現
胃陽虚の主な症状
- 食欲不振(特に朝に食べたくない)
- 消化不良(胃もたれ、膨満感、胃の冷え)
- 下痢(水様便・泥状便で悪化しやすい)
- 胃痛(温めると楽になる)
- 手足の冷え、全身の冷え
- 倦怠感・疲れやすい
- 顔色が青白い
- 舌が淡白で湿っている(舌苔が白く厚い)
- 脈が遅くて弱い(沈遅・虚脈)
胃陽虚の悪化条件
- 冷たい食べ物・飲み物の摂取 → 胃の冷えが進み、消化不良が悪化
- 生ものや消化の悪い食べ物 → 胃の負担が増し、もたれや下痢を引き起こす
- 寒冷環境 → 胃腸の陽気がさらに損なわれる
- 過労・睡眠不足 → 胃の陽気が回復せず、胃腸機能が低下
- 慢性病・長期の病気 → 胃陽虚が進行し、消化力が低下
胃陽虚の問診ポイント
1.食欲の有無
「食事の量は減っていますか?特に朝食を抜くことが多いですか?」
2.消化の状態
「胃もたれや膨満感はありますか?温かいもので改善しますか?」
3.排便の状態
「下痢をしやすいですか?特に寒い日に悪化しますか?」
4.冷えの有無
「手足が冷えやすいですか?温めると楽になりますか?」
5.舌と脈の状態
「舌が白っぽくて湿っていますか?脈は遅くて弱いですか?」
★まとめ
胃陽虚は、胃の陽気が不足し、冷えによる消化不良、胃もたれ、下痢、倦怠感を引き起こす病態です。
治療では胃を温め、消化機能を回復させることが重要です。
生活面では冷たい食べ物を避け、温かい飲食を心がけることが推奨されます。
また、過労やストレスを避け、胃腸を温めることが回復の鍵となります。
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